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束縛系ヤンデレの憂鬱

 ぼんやりとしていても時間は過ぎ去っていく。

 キッチンで朋夏が振り返って俺に、にっこりと微笑みかけてきた。

 どうやら、夕飯の支度が済んだらしい。

「できたみたいだよ」と千秋に声をかけて立ち上がる。


 美味しそうな料理が乗った皿をリビングのテーブルに運びだし、

 自分の分の茶碗にご飯をよそる。

「「「いただきます」」」

 3人で手を合わせて言葉にする。


 隣に座っている朋夏は、

 俺が食事に手をつけるまで自分の箸は一切動かさない。

 俺が食べた後、朋夏に向かって「おいしいよ、ありがとう」と言うと、

 満足したようにもう一度小さい声で挨拶をして食事を開始する。


「ねぇ、おにぃたちの高校って受験難しいの?」

 BGM代わりに流れているだけのテレビの音量を上塗るように、

 千秋が声を出した。千秋から声をかけてくれる事は珍しい。


「んー、試験自体は難しくないよ。どの学科を受けようとしてるの?」

「分かんない。まだ決めたわけじゃないよ。

 今日、学校の先生が『そろそろ志望校とかについて考えておきなさい』

 って言ってたから」


「俺はキャラ科の演劇専攻しか分からないけど。

 それだったら、そんなに難しくないよ。

 面接官の前で、自分の好きなキャラを語ったり、演技するだけ。

 千秋ちゃんなら普通に受かるよ。可愛いからね。

 他の専攻とか学科の事は分からないな。

 やっぱり、創作に詳しくないと駄目なんじゃないかな。

 まぁでも千秋ちゃん本読むのが好きだし、どこでも大丈夫だと思うよ」


「そっか、ならよかった」

「なに千秋、ほんとうにキャラ学受けるの?」

「だから、まだ決めてないって。3年生になってからの話だもん」

「もしキャラ学になったら、朋夏、千秋ちゃんのこと面倒見てあげてね」

「な、なんで朋夏がやらなきゃいけないの!」


「だって、俺は卒業してるでしょ。

 付属の大学に行くつもりだけど、校舎が違うしね。

 もちろん、俺も時間作って見に行くけどさ」


「千秋を見ることになったら、お兄ちゃんを監視できなくなるじゃない!」

「監視って、……本人の前でそんな事を言うか? 普通」


「だって、朋夏だってせっかく今年から一緒なんだよ?

 去年なんか一緒の学校じゃなかったから全然会えなかったし。

 勝手に友達だって沢山作っちゃうし、部活入っちゃうし、

 帰りだってすっごく遅かったし!」


 頬を膨らませて恨みがましい目で俺を睨みつける。

 いや、その表現は適切じゃないかもしれない。

 朋夏の表情は真剣そのもので俺の目の奥まで

 見透かそうとでもしているかのようだ。


「何も今すぐって事じゃないんだから……。

 それに、やましい事なんて何にもないだろ」

「あるなんて論外だし、朋夏の傍にもっといなきゃ駄目なの!」


「もー、おねぇうるさい。大声出さないでよ」

「千秋は黙ってなさいよ!」

「あーほら、喧嘩になるからやめろよ、朋夏。

 落ち着いて、もっと声のトーンを落として」

「だって、お兄ちゃんが朋夏に構ってくれないから。

 一緒に居てくれないから!」


「一緒にいるじゃない。

 登下校も部活も今だってこうして」

「もっとぉ!」


「これ以上は生活が破たんするだろ。

 ほら落ち着いて。良い子の朋夏に戻って」

 肩に手をかけて、もう一方の手で頭を撫でる。


 最初は「うー」なんて小動物みたいに呻いていたけれど、

 ゆっくりと撫でる手に合わせてだんだんと大人しくなっていく。

 朋夏の肩の力が抜けて、頬も幾分かだらりと垂れさがっていく。


「朋夏が千秋ちゃんの面倒を見れないなら、俺も朋夏の事を見なくなるよ?

 朋夏はお兄ちゃんのお願い聞いてくれないの?」

「きく」端的に答えた。

「ちゃんと千秋の面倒見るよ。

 でも、お兄ちゃん、冗談でもそんな事言っちゃ駄目なんだよ、本当は」


「分かってるよ。

 俺たちはきょーだいで支えあって行かなきゃいけないんだからね」

「その通りだよ、お兄ちゃん」

 向かいの席の千秋が気味が悪そうに朋夏を眺めた。

「千秋は一人で大丈夫だから」と呟いて、


「生意気いうな!」と朋夏に怒られた。



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