ツンデレーション
「べ、別にアンタのことなんか好きじゃないんだからね!」
彼女は、腰に手を当てて前かがみになり、
「勘違いしないでよね」と付け加えた。
顔を真っ赤にして口を尖らせている辺り、怒り心頭といった風情だ。
「そんな事わざわざ言われなくても、じゅーぶん分かってるよ……」
ほとほと困り果てた俺は、疲れを感じながらそれだけ呟いた。
これ以上、罵倒の言葉を聞く気力がないので、
背を向けて項垂れながら歩き出す。
「分かってないじゃない……バカ……」
後ろで、ささやくような言葉がかすれる。
けれど、声はあまりにも小さすぎて、
何て言ったのか聞きそびれてしまった。
「え、何か言った?」
「な、なんでもないわよ!」
より一層、怒気を込めて彼女は言い放った。
横をすり抜けながら、俺の背中を思いっきり叩いて、
肩を揺らしながらずんずんと進んでいく。
俺は背中の痛みに顔をしかめて、
ヒリヒリと熱を持っている所をさする。
そんな俺の状況なんてこれっぽっちも関係ないかのように、
彼女は振り返って不満げに叫んだ。
「何してんの、早くついて来なさいよ! 本当に愚図なんだからっ!」
言い返す元気もなく、かけあしで彼女の隣に追いつく。
一緒に並ぶと、彼女の背は頭1つ分小さくて、つむじが見える。
黙っていれば可愛いのにな、なんて益体のないことを考えていると、
突然、手を握られた。
「ほんと、鎖でも繋いでおいてやりたいくらいよ」
……こうして俺たち2人の長かった夏休みが終わりを告げた。
ひと夏を通してずっと一緒に行動を共にした俺たちは、
少しくらいは……仲良くなれたのかもしれない。
彼女の手に引きずられながら、そうだったらいいな、と俺は顔を綻ばせた。
タイトル:『「ツンデレ」キャラの人間関係構築に関する考察』
監督:仲里結太
出演:
主人公:桐原春人
ヒロイン:伊本唯