師匠
昨日総合評価が500を超えました!
そしてジャンル別日ランキングに載っていました。
アクセス数の伸びが過去最大です。
これからも宜しくお願いします。
3章-MP1の新人冒険者 其の16-
いきなり話し出したことで、カオリとスズはビクッとしていた。
無理もない、軽く20分くらい俺とウサミさんは見つめあったまま何も話していなかった。
その間何度か話しかけられていたのだが全部「大丈夫だから」と言葉を制していた。
・・・また怒られそうだからあとでちゃんと言い訳するとしよう。
ちなみに他のラビットファミリーは「念話」中は落ち着いていたのだが、さっきのウサミさんの言葉には「本気かよ お袋!」「予定と違う!」「何か考えが?」「大丈夫なの?」「・・・」と騒いでいる。
例によってウサオさんは何も言わないが・・・
「旅って一緒にクエストを受けるのと違うんですか?」
「いやしばらく、そうだねえスズちゃん? 12歳まであとどれくらいなんだい?」
「・・・47日」
「え? 案外短いんだね・・・まあちょうどいいくらいかね。それじゃあスズちゃんが12歳になるまでに一端の冒険者になるように指導してあげるよ!」
「??? ありがとうございます」
俺が考えている間に先にカオリがお礼を言っている――今後こういう場では発言しないように言った方がいいかもしれない。
「はは! カオリちゃんは素直だね! でも私の指導は厳しいよ! スズちゃんもついてこられるかい?」
「・・・うん」
カオリがOKをしているからかスズも賛成のようだ・・・てかどういうつもりだ?
俺は一瞬の内に「念話」を習得し、話しかけてみる。
(どういうつもりです?)
(!? さっきまで「念話」知らなかったのに使えるのかい? さすがはレア職持ちだね)
(そうじゃなくて、どういう意図なんですか?)
(ショウ君、君は今の状況をわかっているのかい? MP1で上級職持ちなんて誰から見ても「騎士」と思われるさ、そうしてMP1だから弱いと。つまり無力な金持ちがのこのことやって来たと。私達のように「騎士」じゃないと信じさせるのは難しいし、もし理解させれても弱ければ同じだ。そして今の君は無知でしかも弱い)
(・・・)
(はっきりいってここまで来るのに襲われなかったのは奇跡に近いよ。でも今後奇跡が続くとは限らない)
(魔物には襲われましたがたいしたことなかったです!)
(同然だよ。ここまでの魔物は世界で一番弱いのだから。・・・確かに弱くはないのかもしれない、だけどね弱そうに見えるのが一番の問題なのさ。少なくとも襲うにはリスクが大きすぎると思わせないと町中や外でひっきりなしにどんな手段を使ってもやってくるよ)
(くっ・・・)
(だから私達としばらく旅をしようと言っているのさ。これでもギルドでは腕利きと知られているから私達と一緒ならめったに襲ってこないだろう。そして私の指導中に実績を上げて強さをアピールしな。)
(逆に強さを隠した方がいいのでは?)
(君の場合無理だね。オオサカのギルドの穣ちゃんの件もあるし、町にはいるにはギルドカードを見せなくてはいけない・・・つまり絶対どっかから漏れる。そのまま漏れたらひたすら狙われる日々、強くなれば厄介事もやってくる可能性は高いけど何もしないよりマシさ)
(何でそこまでしてくれるんですか? あなたが強くてもその理屈じゃ僕といっしょにいたら危ないと思います)
(そりゃそうだろうね。だけど可愛い獣人の新人を見捨てるわけにはいけないし、何より命の恩人の息子なんだ助けるのが人情ってもんだろ! それにメイ様の忘れ形見なんだろ・・・。)
(・・・母が死んだのを御存じだったのですか?)
母は愛妾だったこともあり世間的には妃になったことも死んだことも伝えられてないはずである。
(メイ様が生きていたら君を監禁なんてさせてないさ・・・どんなふうに死んだのかい?)
(幼少のころに亡くなったのでよくわかってないです・・・ただいつも僕には笑顔を見せてくれました)
(メイ様が笑顔? 何時も無表情だったから笑顔なんて想像できないね。ふふ、幸せだったんならそれでよかったよ。)
ウサミさんはどこか悲しそうな顔をして俯いた。
冷静に考えるとウサミさんの提案は俺たちがこれからやって行く上で唯一の道に思える。
完全に人との関係を絶てば衝突を回避できるかもできないが、今の俺はそれを選択しない。
・・・そう言えばカオリとスズにもっと人を信じるように頑張ると言ってたっけな。
「ウサミさん! そしてラビッツファミリーの皆さん! MP1な冒険者でご迷惑をかけるかもしれません! でもすぐに強くなります! MP1だから弱いなんて言わせません!
MP1でもバカにできない、MP1に恐怖させるくらいになって見せます! だからこれからよろしくお願いします!」
ウサミさんは満面の笑みを浮かべてこう言った。
「良く言った! それじゃあ早速行こうか!」
「え? どこにですか? ギルドのお姉さんとの約束には早いと思いますが・・・」
「そんなもの断っちまいな! 私の方がよく知っている、意味ないよ! それより47日なんてすぐ過ぎちまうよ! それまでに1流の冒険者にしないといけないんだからこんな魔物が弱いところに何時までもいてられないよ! さっさと旅立つ準備をし!」
「47日で一流ですか? 無理じゃないかと・・・」
「大丈夫さ! 私とウサオがメイ様に指導してもらった時は1月だったさ! それに比べたらぬるいぬるい!」
メイの名を聞いてウサオさんがガクガクふるえている――母上は何をやったんだ!?
「仕返しじゃないですよね? あと装備品とか・・・ああそうだ宿屋で10日分の宿泊代払っているんです!」
「もちろんさ!! むしろ感謝しているからだから勘違いしない様に! それとこんな田舎でいい装備なんて探す方が無駄さ! 宿代? それ以上にかせげるようになるから大丈夫! さあさあ早く立って! それと今後は師匠と呼びな!」
「あ、あれ~」
俺たちは新たな仲間・・・師匠達とともにすぐさま旅立つことになった。
だがウサミさんの獲物を狙うような目と張り切りようを考えると、果たして盗賊によって殺される可能性とウサミさんの指導で殺される可能性のどちらが高かったのだろう、と真剣に考えてしまうのだった。
というわけでこの章はこれで終わりです。
次回からある程度強くなった状態で始まります。
・・・プロットが全くないのでもしかしたら明日は登場人物表だけかもしれません。