「賢者」
また新しい職業が登場します。
3章-MP1の新人冒険者 其の14-
うん、どうしよう。
ここは「騎士」じゃないといった方がいい雰囲気なのだが・・・行動制限によって無理である。
伝えたいのに伝えられないもどかしさ――ってあー!!
俺はカオリとスズらに伝えられないことが多い、だがいつかは伝えたい。
そう思つって上位攻略情報を伝えることができるスキルを習得したことを思い出した。
俺は右手の親指と人差し指でピストルの形を取り、その間を顎に当てた。
物知りポーズである。
≪我は知を求め また知を伝えるものなり 汝 未知なる知を求めるか 望むのならば伝えよう だがそれが真か嘘かは己で確かめるがよい≫
「ネタばれ禁止」
これは「攻略wiki」に属するスキルで上位情報を不確かな情報、ヒントにすることで伝えることができるというものだ。
・・・直接伝えるスキルは習得できなかった。
とりあえずこれでニュワンスだけでも伝わるだろう。
「えっと、僕は「騎士」ではありません」
「そんなはずはないだろう」
「いえ、違います」
「登録前から3つの職業を持っていたのだから「加護」か「騎士契約」でしか回復できないはず、そしてショウ君の「加護」の回復量は1だ。誰でも予想できることだ」
「僕の「加護」の回復量は1ではありませんよ」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
カオリとスズを含めみんな驚いている。
どうやらこの程度なら伝えられたようだ。
「なんでだ?」
「「加護」の熟練度を上げる方法を知っているからです」
「・・・私には教えられないってことか」
どうやらここは伝えられなかったらしい。
でも「騎士」じゃないことは伝えられた・・・信じるか、信じないかは本人しだいだけど。
「ギルドカードを見せてくれるかい?」
「はいどうぞ」
「MP1なのに本当に「騎士」じゃないんだね・・・」
ああ、もし「騎士」だったらギルドカードに載るからわかるのか。
ウサミさんはなにやら考え込んでいたが、急にこちらに目を向けた。
(聞こえているかい?)
「な、なに?」
「ショウさんどうしたんですか?」
「・・・大丈夫?」
頭の中に直接声が響いてきた。
俺は思わず声を出してしまい、カオリとスズが俺の方を向き心配そうな目で見つめている。
(びっくりしたかい? 私だよ。ウサミだ。これは私の「賢者」系のスキルのひとつで「念話」だ。頭で私に話しかけようとしてごらん)
俺はカオリとスズに大丈夫だよと伝えながら、やってみた。
(こ、こうですか? でもなんで急にこんなことを?)
(あの子らに伝えるにはまだ早い話だからね・・・。で本題だが君は隠し職業を持っているね?)
(!? い、いえでも犯罪職は持ってないですよ!)
世間一般的な常識では犯罪職=隠し職業という認識だったはずだ。
俺はあわてて弁解しようとしたが
(いや、君が犯罪職を持っていないだろうことはわかっている。これでも見る目には自信があるんだ。はじめはボンボンの騎士様が気まぐれで冒険者になって、何も知らない獣人の女の子をたぶらかそうとしているんじゃないかとマークしていたんだけどね)
(え?もしかしてギルドで話しかけてきたのも?)
(ああそうだよ。特にかわいい子達だ、気にするに決まっているだろう? 私らが指導するのは基本的に獣人の新人さ)
(あ~確かにギルドのお姉さんは新人に優しいといってたけど種族は言ってなかったですしね。納得しました)
(ん? 怒らないのかい?)
(いえ別に、どうせ裏があるとは思ってましたし)
(まあそうか。ところで話を戻すけど、ショウ君、君が持っている隠し職業はレア職業だね?)
(レア職業というのがどういうことかわかりませんが、犯罪職以外の隠し職業を持っているのかということでしたらYESです)
俺がそう答えると、ウサミさんは感動したように頷き、
(なるほどね、そういうことかい。もしかしてだけどショウ君、5歳の時天職を持ってないと言われたんじゃないかい?)
(!? どうしてそれを!?)
(隠し職業を天職として持った場合、外見上天職がないように見えるからね。歴史上のレア職業持ちも、幼少期は天職なしとして呪われた子供扱いされてほとんどが命を落としたそうだよ。まあ実際に犯罪職を天職に持つ子供の方が多いから、そういう扱いになるのも仕方ないんだけどね。君が生きていることと無知さを考えると・・・もしかして今まで監禁でもされていたのかい?)
う、天職が「転生者」というわけじゃないけどほとんど当たりだ。
どうにも確信しているようでごまかしても意味はなさそう。
(ええ、そうです。5歳の時に殺されかけたのですが、殺すのは忍びないからと3日前まで父に館で監禁されていました)
(館? ということは結構いいところの出なんだね。しかもおそらく君の父は君が隠し職業を持っていることに気づいたはず。犯罪職を持っていると確信したら君を生かしてはいないだろうし・・・相当な有識者。!? そういえばショウ君、君は「冒険者」を持っていたはず! そしてオオサカ出身。もしかしてオウマ・オオサカ・ニホン様とメイ・ソウル様の子供かい!?)
いやいやいや、何でそこまでわかるんですか!
館と漏らしたのは失言だったようだ。
てな訳で中途半端なところで区切ってしまってすみません。
いつもの文字数的にここできるしかなかったのです。
次回ようやくウサミとの話し合いが終わる・・・と思います。
裏設定
今回登場した「賢者」は情報系の職業です。
「賢者」を持っていると通常より情報が入ってきやすく、さらに上位の攻略情報でも噂という認識で得ることができます。
この世界では「言語読解」はランクアップやクラスアップ等にも深く関係するため、情報を得やすい「賢者」は単体では戦闘力はありませんがサブ職として非常に優秀で、「賢者」系の職を持っている人は基本的に強いです。
ただし「賢者」系は他人に情報を伝えるのを渋る傾向があり、一部の認めた人に相応しいと思った情報しか漏らしません――これは家族でも例外ではありません。
なお情報系の職業は他にも「情報屋」系があり、上位情報は習得できない代わりに情報を売ったり買ったりすることで広めることができます。
ただし、「情報屋」系は好奇心猫をも殺すという精神のためあまり強くなりません。
レア職業の「転生者」ですがおおざっぱに言うと「大神官」+「大賢者」です。
その他にも下級までの行動制限解除などもありますので厳密には違うのですが。