パーティの資格
すみません、いつもとノリが違います。シリアスも書きたかったんです。
2章-MP1の駆けだし冒険者 其の7-
俺は自分がはいた嘘で気まずくなってしまったので孤児院に着くまでほとんどしゃべらず、道中姉妹の孤児院時代の話を聞いていた。
本当はこっちの常識を少しでも早く聞き出すべきだったんだろうけど、そうすると自分がこの姉妹をだましてただ利用している奴になりそうで嫌だった。
この姉妹がもっといやな奴ならよかった、この純粋そうな眼で見つめられると自分が汚れている、悪い事をした罪悪感を攻められているようだった・・・いやまだこの子らが演技をしているという可能性は否定できないが。
俺たちは孤児院に到着した。
「「「カオリおねーちゃん!」」」
「「「スズちゃん!」」」
「「「おかえりー」」」
孤児院に入ると9人くらいの子どもが現れて元気いっぱいに叫んでいた。
「はい、ただいまです。みんないい子にしてました?」
「スズちゃんじゃない、おねーちゃんだよ!」
「今日の朝出て行ったばかりじゃん、カオリおねーちゃんは心配性だな~」
「スズちゃんは、スズちゃんです」
「むむむ~」
カオリさんは落ち着いて子どもらの健康を確認していて、スズちゃんはからかわれながらもはしゃいでいた。
カオリさんはあまり変わってないが、スズちゃんはどうやらこっちの元気なのが地で、俺の前では緊張していたみたいだ。
「ようこそいらっしゃいました。ここはサトウの孤児院です。私は院長のサトウ・オオサカです」
真っ先に走ってやってきた子供らの後から、1人の年老いたクマ耳な獣人の男がやって来て挨拶をした。
「私は今日からカオリさんとスズさんといっしょに冒険者パーティを組むことになったショウ・オオサカです。よろしくお願いします」
「やはりそうでしたか、ここで立ちながら話すのもなんですし、中へどうぞ入ってください。カオリ、スズ! この人と二人で話したいからお前たちは子どもたちと遊んでおいで」
スズちゃんと他の子どもらはわーいといって駆けて行ったがカオリさんだけは一瞬こちらの方を向いて何か窺うような仕草をして、それから子供らを追いかけた。
「申し訳ないですがこんなお茶しか出せませんがご容赦ください」
「いえ、ありがたく頂きます」
俺は出されたお茶を飲みながらこの老人がどういうつもりで2人きりになったのかを考えていた。
初めは娘を誑かしやがってみたいな展開になるかと思ったが、この老人は終始落ち着いていて非常に人のよさそうな雰囲気を出していた。
「いきなりこんなじじいと二人きりにしてしまってすみません。あの子らといっしょに旅をする人がどんな人かを知りたかったので」
「いえ、あなたにとっては娘同然でしょうし気になるのは当然でしょう」
「あの子たちは昔この孤児院を助けてくれた恩人の子なんです。出来るだけ幸せになってもらいたいと思っています」
老人はカオリとスズの生い立ちを語り出した。
非常に長かったのでまとめるとこうだ。
・カオリとスズの親は冒険者
・カオリとスズは異母姉妹で50日差(←2人の父はヒューマンで5人の妻がいたらしい、うらやましい)
・カオリとスズらが2,3歳くらいのときこの町に来て、経営難で潰れそうなこの孤児院を立て直してくれた。(当座の資金を提供し環境を整えて国に直訴したらしい)
・子ども連れで旅をするのは大変なので孤児院で預かることになった
・それから半年に一回、顔を出しに戻ってきたが3年後クエスト中に亡くなったらしい
でそれから2人がどんなにいい子かを永遠と聞かされた。
お、親バカめ~
だがこれで2人のことでわかったことがある。
それは2人が悪意を知らずに育ってきたということだ。
この孤児院にいるこの老人もだが非常に人がいいというか2人に甘いし、子どもらも純粋に育っている。
エピソードに出てきた周りの人も優しい人ばかりで悪人がいない。
つまり2人は他人が自分を害することもあるということを知らない。
だからパーティを組むのにMP1で怪しいやつだけど気にしなかった――スズちゃんが人見知りだから同じくらいの年だから安心していたのかもしれないが。
くそー俺に惚れたからというお約束の理由を期待していたのに・・・。
ふ~僕も世間知らずではあるけどここまでひどくはないな、てかこんな箱入り娘旅に出せないだろう・・・そうか
「なるほどだから私が世間の害意から2人を守れるか確かめたかったんですね」
「本当なら出したくないんじゃが12歳でここを出る決まりじゃし、本人らの希望でもあるしの。もし登録が出来ても信用できんものだったらすぐにやめさせるつもりだった」
「私は合格ですか?」
「わしは見る目はあるつもりじゃ」
「私は出会ってすぐあの子らに嘘をついて未だ本当のことを言っていませんよ」
「いったじゃろ、わしは見る目はあるつもりだと。もしお主が悪意があって嘘をついたとしたら今ここで嘘をついたことは言わんじゃろ」
「・・・」
「それにあの子らは嘘をつけんのじゃ、パーティの誰も嘘をつけないのではこの先やっていけん! お主がもし全く嘘をつけないやつならわしはお主を信用せぬぞ」
「ありがとうございます」
俺は少し救われた気がした。
あと何回で旅に出られるだろう・・・
感想をお待ちしています。
なお院長は初めは丁寧語でしたが2人の話をしながらショウの性格を判断し普段のしゃべり方に変わっていきました。
警戒が解かれたという感じです。
2章もう結構書いたような気がするのにまだ屋敷を出て半日もたってない上に町の外に出れない・・・。