少女は空に飛び、男性もまた飛んだ
ヤンデレエンド…を書いていたはずなのに。
どうしてこうなった!
今日はリンちゃんにお土産。
その名も「リボン付きカチューシャ」
鏡○リンがつけてるのと同じような物。
急いで家に帰ろうとして人にぶつかったが、無視して帰った。
今の俺は誰にも止められないのさ!
家に到着。
すぐに買ってきたものを机に置き、リンちゃんを呼ぶ。
『えっと…』
どうやら喜んでくれているようだ。
さっそくそれを着けさせ、嫌がって様な気もするが、かわいかったので気にしない。
無理言って、そのままの姿で晩御飯を作らせる。
ネコ耳+エプロン。姿は見えないけれど、十分妄想で補える。
食材を切る音がリズム良く聞こえ、眠気を加速させる。
テンションを上げ過ぎたのだろう。次第にまぶたが重くなってくる。
俺「リンちゃん、ご飯出来たら起こしてね」
晩飯が出来るまで一眠り。すぐに意識が持っていかれる。
ここは…学校…? なんで俺は学校にいるんだ?
周りは真っ暗なのに、赤い月があたりを照らしている。
人っ子一人いない。歪んだ世界で地面にうずくまってる俺。
動こうと思っても、金縛りのようになっていて動けない。
だんだんと気温が上がり、汗が滲み出てくる。
世界は赤一色になり、地面が溶けていく。
ゆっくりと落下していくと、温度がさらに上がる。それにしたがって、押しつぶされるような威圧感。
ハッと目が覚める。
そこは確かに俺の家で、至って変わらない日常…。至って変わらな…。
目の前に広がるのは、湯気を立てる美味そうな料理と、いくつもの火のついた蝋燭。
起き上がろうとしたが、両手両足を縛られ、いつも通りには起き上がれない。
若干苦労しながら起き上がると、包丁がこちらにゆっくり漂ってくる。
俺「リンちゃん…? これは…どういうことかな…?」
包丁はなおも漂い、俺の近くになっても速度は変わらない。
身の危険を感じ、すぐに伏せる。
俺の頭上で包丁が止まる。
次は紙が俺の頭上で止まる。
『動かないでください』
俺「いや…動かないでくださいって…動けないんだけど…」
『口答えもしないでください』
俺「えっ?」
包丁が下に落ちてきて、目と鼻の先で止まる。
どうやらリンちゃんは本気らしい。でもなんで…こんな風に…。俺、何かした?
考えても原因はわからず、むしゃくしゃしてくる。
俺「ごめんリンちゃん。俺、何か…」
言い終わらない内に、口に温かい物がつっこまれる。
これは…晩飯?
目の前で包丁と箸が浮かんでいる。
もう訳が分からない。つまりあれか。デレか。
…そうか! 今日はツンデレプレイなのか!
俺「ビックリしたなぁ、もう。そういう事なら先に言ってくれれば…」
またも包丁がやってくる。
しかし今度は、腕を軽く擦っていった。
赤い線が入り、血が浮かんでくる。
これは…マジなの…? そういうプレイじゃないの…?
食べ終わると、椅子に座るように言われる。
椅子と俺の体が、ガムテープでグルグルと固められる。
足と腕も同様に固められる。
そしていつも通り、紙が浮かんでくる。
『私の物なんです』
支配欲かよ…。この状況はマズイ…やられる…。
包丁の背で首筋を撫でられる。
冷たい感覚が、俺の中を走り抜ける。
『逃がしませんよ…』
朝日が昇り、窓の隙間から太陽の光が射しこんでくる。
今もなお包丁は目の前を浮遊している。
俺の体は刃向う度に傷つけられ、全身にみみず腫れや出血を起こしている。
一睡も許されず、椅子の下にはたくさんの紙切れが落ちている。
『朝ごはん、作りますね。私の愛を余すことなく受け取ってください』
台所に飛んで行った包丁は、何秒か毎にこちらを向く。
しばらくすると、2つの皿がこちらに漂ってくる。
『さぁ、食べてください』
口を開ける元気さえない。
それを見かねたのか、皿に乗った料理がスプーンでちょうど1口分、俺の口の中へと乱暴に突っ込まれた。
突然入り込んだ物を吐き出すと、すぐに刃物が飛んでくる。
足に1本の赤いラインが刻まれる。
痛みに呻く元気もなく、声にならない音が口から漏れる。
何度もそれは繰り返され、口の周りは涎や食べ物で汚れ、閉じることはしなくなっていた。
何時間過ぎただろうか。
増えていく傷と紙切れ。
どこを見ても焦点が合わない目。感覚が無くなった腕と脚。
『そんなに見つめて。もっと愛してくださいよ』
刺激するように包丁で傷をつけられる。
そのうちに意識も薄れ、目を開く力さえ無くなった。
息をするだけで精一杯。
最後に見た光景は、俺の腕の骨が見えるシーンだった。
痛みはない。
視界を失った今、リンちゃんと会話する手段が断たれた。
それでも紙に文字を書く音が聞き取れた。
数日後。
とある家で、椅子に縛られた男性の死体が見つかった。
男性は首から上が刃物のようなもので切り取られていた。
脚には複数の傷。左腕は骨がむき出しの状態。
椅子の下には大量の紙。
男性の頭は、未だ見つかっていない。
このニュースは世間に広く知れ渡った。
そんな世の中をはるか上空から見ている、1人の少女と1つの頭があった。
書いた本人も、どこを間違えたのかわからない。
何でこうなった…。
ヤンデレはヤンデレ視点で書くのは楽だけど、ヤンデレの被害者視点で書くのは難しい。
今回で身に染みた。
これからは、ヤンデレ視点で書いていこう。
例えばリンちゃん視点とか…。
いや、何でもない。
ちなみにタイトルは、GOSICK風味にしたかっただけで、深い意味はないです。