幽霊責め
回避推奨。激しく回避推奨。何も言わず引き返すことを、強くお勧めします。
この性癖が苦手な人には、強烈な吐き気を催す可能性があります。
十二分に注意してください。
それを気にしない勇者は、そのまま下へ。
そんなこんなで十数日すぎた。
これといった進展はなく…まぁ、相手が相手だから進展も何もないんだろうけど。
喧嘩するわけでもなく、激しく愛し合うこともなく。
いたって普通の恋人生活を送っていた。
そんなある日。
学校から家に帰ってくると、机の上にアレな本が出されていた。
誰だ、オカンみたいな事をする奴は…って、え…。
なぜ見つかったし!
ベッドの下は危ないと思って、クローゼットの隠し棚にしまっておいたのに!
「リンちゃん!? リンちゃん!!」
何も持ってないのか、姿が確認できない。
居間にいないとなると、残るは寝室だけ。
扉を思い切り開けて、周囲を見渡しておかしな箇所がないか確認する。
一歩踏み出すと、何かに躓いて、床と顔の距離が一気に縮まる。
床にひれ伏した俺の背中に、何か重たい痛みが走る。
それも一回ではなく断続的に。
ようやくそれが途切れたところで、姿勢を直す。
「リ、リンちゃん…? それ、人を殴る物じゃないよ…?」
手に持っていたのは、アイロン。
それがまた上に浮いていき、俺の腹めがけて…。
『こ、こういうのがお好きなのかと思って…』
机に置かれていた本が開かれる。
お察しの通り、男性が女性に嬲られている本。
この本の内容を、リンちゃんが実行してしまったわけだ。
「すいません…。俺が悪かったです…」
またも俺に全責任がある。
しかし、なぜ見つかった。リンちゃんの存在に気付いてからは出してないはず…。
「何でこの本の場所を…。知ってたの…?」
『…はい』
考えられる要因は一つ。
存在に気付く前に、その本を出したことは何度もある。お世話になりました…ってそうじゃなくて。
その時からリンちゃんがいて、俺が気が付いてなかった。
そういうことになる。
つまり俺のナニも見られていたと…うわぁぁぁぁぁあああああああああ!!
もうお婿に行けない……。
まぁでも…見られてたと思うとそれはそれで…。
それにさっきのだって、そんなにイヤじゃ…。何言ってるんだ俺は。
『気持ち…良かったんですか?』
…。嘘を言うべきか、素直に答えるべきか。
もっとやってくれ! とはさすがに言えないし…。
誰か、このドMを救ってくれ…。俺はどうしたらいい…?
幽霊責め…。変なジャンルに目覚めそうだ…。
「気持ち…良かった…です…」
素直な俺に…乾杯…!
明かりは夜明けまで消えることなく、男の悦びの声が響いたとかいないとか。
朝。
不眠不休。喉不調。テンション有頂天…だった。
踏まれることは出来なかったが、道具を使って責められ続けた。
包丁の背で体をなぞられるのにはゾクゾクした。
声による会話は出来なかったが、リンちゃんの書く声が俺の何かを加速させた。
動くと刺さってしまいますよ。
こんな文、最高だった。
そして今。
本来は学校なのだが…行けるわけないだろ…。
『大丈夫ですか…?』
これが大丈夫な状態に見えるのなら、病院に行った方がいいだろう。
「だ、大丈夫…だけど、今日は休むよ…」
一眠りしよう…。体が持たない…。
目を覚ますと、辺りは暗かった。
下はパンツのみ。上半身裸。
こんな姿を誰かに見られてたら、もう生きていけないな。
「リンちゃん? どこ?」
クルリと見渡すと、包丁がこっちにやってくるではないか。
「ちょ! もう終わったから! 続きない、ない!!」
そう言うと、それは引き返していき、今度は紙がやってくる。
『今、晩御飯を作っていたんですが…』
…あら、そうだったの…。
べ、別に続きを望んでいたわけじゃない!
リンちゃんの料理もかなり上達してきて、下手なファミレスよりはウマい。
とはいえ、13歳の少女。そう大したものは作れない。
しかしそれで十分。むしろ年相応といった感じで、俺には嬉しい。
「ねえリンちゃん、一緒にお風呂入らない?」
欲望丸出し。それでこそ俺だ。
『え…その…そんな…』
きっと赤面してるだろう。あぁ…いいな…。妄想するのは自由だからな。
「リンちゃんが嫌なら無理にとは言わないよ。でも、入ってくれたら嬉しいなぁって」
さすが俺! 汚い!
リンちゃんの優しさに付け込んだ、嫌らしい一言。
俺を止めることは、あんまりできない!
『でも…』
「ううん、いいんだ。無茶言ってごめんね…。俺となんて…汚いよね」
自嘲的な言い方。さぁ、どうするリンちゃん!
『汚いなんて思ってませんよ』
「じゃあ…」
タオルと俺の着替えが宙に浮いて、風呂場へと飛んでいく。
俺の中で何かが崩れ去っていった。
最初はそんな気なかったのに、途中から妄想力が爆発した。
幽霊責めって新ジャンルになるかな?
もちろん次はお風呂。