生活
ネタがある内はハイスピード更新。
無くなれば、それで終わり。
感想くれると作者が喜び、よりハイスピードになります。
ネタがある内は。
夕方。
学校から帰ると、玄関に置いてあるメモを見つけた。
『朝はごめんなさい…。謝ろうと思ったんだけど、忙しそうだったから…』
思い出せば、今日の朝はやたらと忙しかった。
あの事件の後、友人からメールが入り、朝飯も食べずに学校に向かった。
その時にリンちゃんが何か言ってた様な気もする。
「言ってた」というよりも「書いてあった」の方が正しい。
机の上に紙が置いてあったような気もする。
今になってそのことに気が付き、急いで机の上を見た。
しかし、そこに紙は置いてなく、きれいさっぱり何もなかった。
罪悪感と後悔から、俺は紙を探し続けた。
結果から言うと、それは簡単に見つかった。ゴミ箱の中に丸めて捨ててあったから。
『ごめんなさい…。まだ痛みますか…?』
読んだ瞬間に涙があふれ出た。
少女に心配させておいて、しかもそれを無視するなんて。俺は最低の男だ。
「リンちゃん! 俺の方こそごめん! 朝、気付いてあげられなくて」
机のそばに立って、そう言った。すると、ゆっくりとシャーペンが動き出した。
リンちゃんはすぐ近くにいる。姿は見えないが、俺には分かる。
きっとここだ。今、俺はリンちゃんの後ろに立っているはず。
触れないリンちゃんを強く抱きしめてあげる。悪いのは俺なのだから。
『私が悪いの…ごめんなさい…』
それを見て、さらに強く優しく抱きしめてあげる。
耳元…であろうところで、そっと囁いた。
するとまたシャーペンが動き出し、紙に文字が現れる。
『私…あなたの反対側です…』
……。
あ、ああ、わかってるさ。わ、わざとに決まってるじゃないか。ははは…。
すぐさま反対側に回り、さっきと同じように抱きしめて頭を撫でてあげる。
いるのかどうかなんてわからない。でも、それでいいじゃないか。
「もし…もし俺の霊感が強かったら、リンちゃんを見ることが出来たのかな?」
何気なく漏れた本音。
『私は…今のままが良いと思います』
「どうして?」
『…わかりません。…ごめんなさい…』
「いや、謝らなくてもいいよ」
学校から帰った服装のまま時は過ぎて、気付いたらお月様が空を照らしていた。
晩飯を買いに行くべく、再び靴を履こうとした。
残念ながら俺は料理なんてものには縁がなく、調理実習では「邪魔をしないことが仕事」と言われたほど。
俺が料理をすると、なぜが焦げる。それに色が紫やスカイブルーになる。
そんなわけで、晩飯は食べに行くか弁当を買うか。それしか選択肢がない。
で、買いに行くために靴を履きたいのだが…。
「リンちゃん? その靴を返してくれないかな?」
いつの間にか玄関に向かったリンちゃんは、俺の靴を持って離れていく。
そして靴が落ちた場所は、玄関から一番離れた場所。
つまり…行くな、と?
いや待て、これはリンちゃんからのメッセージじゃないか?
例えば…
「ずっと私の傍にいて」とか「今日はどこにも行かせないぞッ」とか。
おっと、これ以上はイケナイ領域の妄想が…。
「えっと…晩御飯を買いに行きたいんだけど…」
今度はシャーペンが宙に浮き、文字が書かれる。
『私が晩御飯を作ったら…迷惑でしょうか?』
…これは意外だった。そっちの方向もあったか!
リンちゃんの手料理か。悪くない…いや、非常に良い。
幽霊とはいえ、13歳の少女の手料理とか…俺だけこんなに幸せ者でいいのだろうか!
「ぜんぜん迷惑じゃないよ。作ってくれるなら、お願いしようかな」
『はい!』
しばらくすると、いい匂いが部屋を満たしてくれる。
勝手に裸エプロンで料理をしてくれるリンちゃんの姿を妄想して、俺のナニがアレなことに…。
包丁が宙に浮く光景は、ホラー映画に出てきそうな感じだったが。
運ばれてきた料理を見ると、とてもおいしそうなオムライス。
…相手は少女なんだし、やんわり優しく言おう。
味が濃い!
決して不味いわけじゃない。俺だって濃いめの味付けは大好きだ。
だけど、これは「濃い」の範囲を超えている。
むしろ辛い。辛いを通り越して痛い。
のどの水分が全部蒸発しそうなくらい痛い。
紙には
『どうかな…? おいしいですか?』
…。
「と、とってもおいしいよ。でも、ちょっと味が濃いかな?」
『す、すいません…。私…味見ができなくて…』
…許すしかないだろ。
俺がリンちゃんに怒れるわけがない。
悪意があってそうなった訳じゃないし、我慢すればこれくらい…。
「でも、リンちゃんが一生懸命作ってくれて嬉しいよ」
明日は休みだし、腹痛になっても大丈夫だろう。
もうすでに腹の調子に違和感を覚えているが…。
…そういえば、俺が寝てるときリンちゃんはどこにいるのだろう?
これまでずっと気にしてなかったが、幽霊も眠るのだろうか?
気になって、小声でリンちゃんを呼んでみた。
『どうしました?』
…いるんだ。すぐに反応が返ってきたということは、俺のすぐ近くにいたのか。
「いつも俺が寝てるとき、リンちゃんはどうしてるの?」
『私は寝れないので、ずっとここにいますよ』
「っていうことは…いつも俺の寝顔を見てるってこと…?」
『やっぱり…迷惑ですよね』
「いいや、そんなことはないよ。リンちゃんがそうしたいのなら、止めろ、なんて言わないよ」
内心、変な寝言言ってないか、激しく心配だったがどうしようもない。
NOと言えない人間なんだよ、俺は。
それに、リンちゃんに見られながら寝てると思うと…いや、なんでもない。
「おやすみ、リンちゃん」
『おやすみなさい』
予定としては5話か6話で完結。
欲を言えば、ずっと続けたい。
ロリ系は書いてて楽しいです、はい。