【短編ギャグ】新訳・桃園の誓い
「「「われら桃園に誓わん!!!」」」
劉備、関羽、張飛の三人は、危機にある漢の国を救うため義兄弟の契りを交わした。
これこそ有名な「桃園の誓い」である。
まずは、3人で誓いを結び、その後で兵士を集めて軍隊を作る予定だ。
「今日という日は本当にめでたいね。僕たちはもう義兄弟だ。」
まぶしい笑顔を浮かべてニコニコしているのは劉備。長男となった男だ。
「うーん、しかし兄者、一つ聞きたいことがあるんだがいいか?」
発言したのは関羽。次男となった男だ。
「おお、関羽よ。なんでも聞いてくれ、僕たちはもう兄弟なんだから。」
「それじゃあ聞くが、俺たちの軍隊のトップは誰にするんだ?。」
「...、何が言いたい?」
場の空気は険悪になり、一気に凍り付く。
関羽はなおも続けた。
「いやまぁ、このご時世に『兄だから、弟だから』みたいな理由で組織のトップを決めるのはコンプライアンス的にどうかと思って。」
「アァン!?。黙れやひげ面!!。ひげ抜いてイカ墨ッパゲティにしてやろうか!?」
「あ、兄者、落ち着いてくれ。興奮しすぎて言葉が変になっている。」
「フーッ、フウーッ」
「やだ...、この人怖い。張飛はどう思う?。」
急に話を振られたのは三男の張飛。彼は首をかしげながら答えた。
「すまん関羽の兄貴。『トップ』や『コンプライアンス』みたいな英語を使うのは止めてくれ、日本語でないと理解できない。」
「一体どこに突っ込んだらいいのか...そもそも俺たちって日本人だっけ?」と関羽は思った。
だが張飛に言葉の意味を教えたところで何も理解できないだろう。
そんな思いをよそに、張飛は発言を続ける。
「まあなんかよくわかんないけどよ。俺たちは戦いに行くんだ。一番強い奴が偉いってことでいいんじゃないか?。」
劉備の表情に鬼が宿る。
「このクソ馬鹿野郎が、余計なことを言いやがって...。」と、そんなことを言いたげな顔である。
筋肉ゴリラの関羽、張飛と比べれば、劉備は体格で劣る。
そんな劉備の様子を見て、仕方なく関羽が助け船を出す。
「待て張飛。組織のトップは別に先頭に立って戦う必要はないんだ。だから武力で決めるのはよそうじゃないか。」
劉備の表情に花が宿る。
「よくわかってるじゃないか、さてはお前ツンデレだな...。」と、そんなことを言いたげな顔である。
平民ごときの関羽、張飛と比べれば、劉備は家柄で勝る。
実は漢王室の血筋だからである。
この機会を逃すまいと、劉備は関羽の発言に飛びついた。
「そうだよなぁ関羽。今は乱世の時代だ、だからこそ"分かりやすい旗印"が必要じゃないか?。僕は漢王室の血筋だ。つまり僕が...」
しかし、ここで張飛が首をかしげながら発言した。
「でもよ。劉備の兄貴。俺たちは義理とは言え兄弟なんだ。だから、兄貴が高貴な血筋であれば、弟の俺たちも自動的に高貴な人間ってことになるんじゃねぇのか?」
「おい張飛ィ!!お前馬鹿のフリしてるだけだろ!!。本当は全部わかってやってるだろ!!」
とうとう劉備はブチぎれた。
自分こそがトップに立ち、関羽と張飛をこき使って王様になる野望を邪魔されたからだ。
つくづく邪悪な発想ではあるが。
そんな劉備の様子をみて関羽は呆れながら発言をする。
「なあ劉備の兄貴、一度軍の兵士を集めて、それから多数決で決めるというのは...。」
「やだやだやだやだ。ぼくおうさまになりたいもん!!。ぼくがとっぷだもん!!。しゅちにくりんするもん!!。」
とうとう駄々をこねだす劉備。何でこんなのを長兄にしてしまったのか、関羽と張飛は後悔していた。
しかし、3人が大騒ぎをしていたせいか、騒ぎを聞きつけた周辺住民が集まって来た。
「オイ、うるさいぞ!!一体何を騒いでいるんだ!!」
関羽は焦った。自分たちの間抜けな争いが周辺住民に知られてしまえば、この後の兵士の募集にも悪影響が出るだろう。
何とかこの場を収めるしかない。
「い、いや、なんでもない。たった今劉備殿をトップにして、軍を作ることに決めたところだ。これは気合を入れるための儀式を...」
「もぉおおおおおおお、しょうがないなぁあああああ。さいしょっからそう言えばいいのになぁあああああ。」
ものすごい勢いで劉備が食いつく、「コイツうぜぇええええええええええええええ」と関羽と張飛は思ったが、宣言してしまった以上トップは劉備にするしかない。
こうして劉備、関羽、張飛の三人は乱世に飛び立つのであった。




