第9話 その名はヒュペリオン隊
木星政府軍にもSERTは存在しており、その中でもヒュペリオン隊はかなりの実力を誇っている。
その隊長であるシュウ・サカキは上層部からの命令で地球政府軍の方へ、部下一同と共に赴くことになった。
「まさか、ここに来ることになるとはな」
「大尉、地球はお嫌いで?」
「そんな訳ないさ。むしろちょっと楽しみなまでだ」
シュウは地球政府軍の情報を調べ、事前に支給されていた地球政府軍の戦闘部隊のデータを確認していた。
「プロメテウス隊の隊長に、一度でいいから会ってみたいと思ってな」
「隊長、観光目的じゃないんですよ?」
「分かっているさ、エルダ。ひとまず地球に到着するのを待つとしよう」
彼らを乗せた木星から旅立った戦艦は、無事に地球へと到着した。
着陸地点は地球政府軍・ワシントン支部の軍港。辺りはすっかり暗くなり、周辺の電灯が闇夜を照らしていた。
「シュウ・サカキ大尉と申します。こちら、通行証です」
「顔認証、パスワードを確認したが問題ないな。通れ」
「はっ」
こうして、ヒュペリオン隊は地球政府軍と合流。
シュウ達は、そのまま既に用意された各々の自室で眠ることになった。
翌日、ヒュペリオン隊はプロメテウス隊、オルフェウス隊の面々と会う事になる。
ラディエスは度重なる新たな部隊の合流で、困惑しつつあった。
「ヒュペリオン隊というと、木星政府軍のSERTか」
ラディエスは、デバイスで興味深そうにデータを確認する。
「そうみたいだな。なんでもあの部隊にもネオ・ブレイダーシリーズの機体が配備されているとのことだ」
ジュノーもまた、彼らに興味津々であった。
「ふぅん……。しかしどういう奴なんだ」
すると、シュウ達三名が入って来た。
「どうも、初めまして。ヒュペリオン隊のシュウ・サカキ大尉です」
「部下のエルダ・パーカー、階級は少尉です」
「同じく、部下のケビン・ラッツと申します。少尉であります」
三人は敬礼を行う。そしてラディエスはシュウの方にスッと目線を合わせる。
「シュウ大尉……」
「僕の事は呼び捨てで構いませんよ、ラディエス大尉」
シュウは優しく笑って見せた。
「ひとまずここに座れよ」
「あぁ、どうも……」
三人はミーティングルームで各々の事情の話をしてから、話題を切り替えて今後のミュートロン軍への対策を練った。
数時間話し合った結果、ただ単に兵力を増やすだけでは厳しいため、訓練や演習のペースを増やし、今後はより一個人の技能を研磨していくこととなる。
そして翌日の朝──
ミュートロン軍は進軍を開始したが、この時点で既に地球政府軍のサーバーはミュートロン軍のコンピューターウイルス『DEBRIS』に感染しており、防衛システム全般が麻痺していた。
情報処理部署では、可能な限り迅速に復旧できるよう対処を行ったものの時すでに遅し。敵軍は彼らの隙を突いて地上へと侵攻。
初動が早かったのはワシントン支部。プロメテウス隊を含む戦闘部隊を出撃まで漕ぎつける事に成功。この際に情報処理部署を支援したのはヒュペリオン隊の三人であった。
「なんとかサーバー復旧まで持ち直せそうですね、ディノ司令官」
「うむ、そうだな。このまま君達は出撃してくれ。他の部隊は既に出撃している」
「了解!」
こうして、ヒュペリオン隊も出撃することとなった。
“ラディエス! 地上に既に来ているヤツは俺達が潰す。お前は早いところ、敵の通り道を至急潰しておくんだ”
「分かってますよ、ジュノー少佐」
ラディエスは緊迫した空気が張り詰めた中、ワシントン基地上空を駆ける。
“とりあえず僕達が敵の攪乱をするんでね。今度は逆に彼らの戦闘システムを麻痺させる”
「そうか。ここは任せる」
そして、ラディエスは機銃を構えて上空で敵部隊を迎撃し、攻撃を始めた。
「よし、このまま撃つぞ! パティとゼナードは遠距離から攻撃を頼む。今回は俺が先制を取る」
“了解、隊長さん!”
“ラディー、任せて”
ラディエスはすぐさま前方に出て、ビームライフルを速射。
早速敵機をライフルで一機撃墜し、近づいて来たもう一機の敵機をメガ・ビームソードで斬り裂いた。
「さぁ、どこからでも来い!」
“ラディエス大尉、後方から敵部隊接近!”
「何ィッ!?」
アリカの指示に従い、ラディエスは後方から忍び寄る敵勢を一掃するため、ビームライフルを拡散モードに切り替えた。
「これでも喰らえェッ!」
「しまったァッ! ギャアァッ!」
敵戦闘部隊を手早く撃墜していくラディエス。さらにパティとゼナードが加勢されることにより、火力はより確固たるものとなる。
「このォッ!」
パティは必死になってビームライフルを撃ち続け、空中を軽やかに飛ぶ。
“パティ、ここは俺が!”
さらにゼナードは、素早く光線を撃ってパティの後方から付け狙う敵を上手く撃墜していく。
“ゼナード中尉、バーネイルが接近しています! ここはラディエス隊長に任せた方がいいでしょう”
「だってよ、隊長さん! ここは任せたぜ」
“分かったぜ。このまま早急に撃墜する”
ラディエスはすぐさま接近戦に挑む。
「来たな……。メガ・ビームソード展開!」
「落ちろォッ!」
指揮官機はグレネードボムでなんとか攪乱しようとするも、すぐにラディエスは回避。
そこから隙を突いて、ソードで素早く突く。
「させるかよォッ!」
「しまったァ! ウワアァァッ!」
ラディエスは指揮官機を斬撃で薙ぎ払って仕留めた。
一方、ヒュペリオン隊のシュウは、ソニックブレイダーMk-Ⅱの固有武装のロングレンジブラスターで遠方から来る増援部隊を仕留めていた。
「これで決める!」
シュウの放った光線は、敵機を一閃。
“シュウ大尉、接近戦は我々が行います”
「分かった、前方での支援攻撃を頼む」
“了解”
そして、エルダとケビンはソードで敵機に立ち向かい、素早く敵勢を倒していく。
「隙を突いて……、斬る!」
ケビンは素早く敵機を撃墜した。だが、後方にも敵機が付きまとう。
「ケビン、ここは私が!」
“エルダ、頼むぜ”
エルダは後方の敵をすぐに仕留め、レーダーで敵の増援がこれ以上来ないか確認し、このまま再度シュウの方へと合流する。
「エルダ、戦闘部隊の本隊がこっちに来ている! 至急撃ち落とすぞ」
“了解!”
ヒュペリオン隊は、機銃を用いて敵部隊と戦闘を繰り広げる。
「このまま撃ち続けろ!」
“了解”
シュウはブラスターで敵機を素早く撃墜していく。
さらに来る敵勢を相手に怯むことなく、彼らはひたすら引き金を引く。
「まだ来るか! もう一発!
“ケビン、後ろからも来てるわ!”
「分かった、エルダ」
ケビンとエルダは、ビームライフルで敵勢を撃ち落とし、さらに攻撃を上手く回避して殲滅。
この戦闘での結果を受け、ミュートロン軍は撤収し、一旦戦いは終わった。
戦いが終わり、ラディエス達はヒュペリオン隊の三人と談笑する。
「そうか。シュウは俺とタメなのか。まぁ、仲良くやろうぜ」
「ああ。これからは色々と大変なこともあるだろうけど頼むよ、ラディエス」
シュウは彼の方を片手で軽く叩く。
「隊長さんも仲間がまた増えて嬉しそうじゃないか」
「まぁ、そうだな」
「紅茶持ってきたから、皆で飲んで下さい」
パティは紅茶を持って来て全員に配った。
「おぉ、楽しそうだな」
すると、オルフェウス隊の四人も談話室に来た。
「お前らすんなり意気投合してんじゃねぇか。俺達も混ぜてくれ」
「ジュノー大尉たちは、とりあえずここ座ってください」
「ありがとよ、ラディエス」
その後も彼らは僅かな憩いの時を楽しんだ。
この静寂がいつ壊されるかは、まだ誰も分からない。
戦禍の中でも、彼らはまっすぐに逞しく生きていく。




