第5話 ラディエス、奔走!
ラディエスはある日、ロードブレイダーMk-Ⅲの武装システムをまじまじと見つめていた。
決して初めて見るわけではないはずなのだが、それが彼の想像欲求を刺激する。
「なぁ、ゼナード」
「どうしましたか、隊長さん?」
ゼナードはいつものように、冷たい目つきでちらりと顔を見る。
「俺、このウェポンパックを自動的に装備出来たら便利で面白いと思うんだ」
「なるほど……。確かに、そりゃあ男のロマンをくすぐられる提案じゃないか」
「だろ? 恐らくマルクも賛同してくれるはずだ。ちょっと行って来るぜ」
ラディエスは少年のような笑顔で、マルクに渾身のアイデアを提案した。
「ふぅん……。武装切り替えのオートメーション化ですか……。それに関しては上層部への話が通れば、本格的に開発出来そうな気がしますね。可能な時に提案書を書いて出しておきますよ。任せておいてください」
「ありがとう。助かるぜ。また何か動きがあったら連絡頼むぞ」
「了解!」
そのままマルクは、他の機体の整備に向けて隣のドックへと走り去っていった。
しかし一方で、ミュートロン軍は自分たちの持つ明晰な頭脳や優れた技能をふんだんに使い、新型のMUである『マグナイド』の開発を終えていた。既に一部の部隊には、配備が完了している。
あとは実戦でどこまで結果を出せるか──
「これが新型か……」
エスニアは、マグナイドをじっくりと見つめた。
あまりにも強靭的な武装に陶酔していたのだ。
「背面のビームブラスターは、肩部の方へと傾けることが出来ますよ。地上戦では、これで遠距離攻撃において実力を発揮するかと……」
「そうか、面白い……。気に入った」
「エスニア少佐、今度の作戦ではベルリンに降下作戦を行うとのことでしたが……」
ロルフは、今度の作戦に対し気がかりな表情であった。
「今度の作戦は上手くいく。間違いなかろう」
エスニアは自信に満ちた笑顔で、拳を軽く握り締める
果たして彼の思惑通りになるか。
そして数日後、地球政府軍ベルリン基地は、ボナパルト隊の手によって襲撃を受け、甚大な被害に苛まれた。この作戦では、遠距離攻撃型のマグナイドが猛威を振るい、地上戦闘部隊の半数以上が犠牲になったという。この件に関しては、世界中のメディアに取り上げられ、ラディエス達も黙って見ている訳が無かった。
「なんて酷いことを……。しかも罪のない人まで殺すなんて」
アリカは一筋の涙を流す。
「これ以上ミュートロン軍による被害が出ないようにしないとね……」
「そうだな、パティ」
ラディエスはそのニュース記事を読みつつ、ゆっくりと頷く。
「このままじゃアイツらの思う壺だよな。なんとしても奴らを止めないと」
「ゼナード……、これからも出来る限り、ワシントンを守っていこう」
ゼナードは薄っすらと笑みを浮かべた。
「いつか平和になる時が来るといいがな」
ひとまず前を向いて生きようとするラディエス。
しかしその中で、再び敵襲警報が流れた。
“ミュートロン軍接近! ワシントン基地の戦闘部隊は全員出撃せよ!”
「さぁ、早い所行こうぜ!」
「了解! 任せてよ!」
ラディエス達は、早急に戦闘態勢に入る。
“ラディエス隊長、今回の作戦では重装甲型の戦闘部隊が多いようですが……”
アリカは不安そうな面持ちで、ラディエスの機体に分析した敵勢のデータを送る。
「なら、ストライクタイプで行く。これなら遠距離攻撃に向いているだろうし、上手く倒せるはずだ」
“分かりました。整備班にも伝えておきます”
そして、Mk-Ⅲのハードポイントにはストライクタイプの武装が装着された。
こうして、戦闘は幕を開ける──
「来たなァッ! 例の新型よォ」
敵機は、意気揚々と機銃を撃っていく。
「照準合わせた……。発射だ!」
「何ィっ! ウワアッ!」
ラディエスは左腕のインパクトキャノンで、電光石火の如く敵に攻撃を仕掛ける。
その放った光線は敵機を一閃。
「よし、まず一機仕留めた」
“隊長さん、空中の敵はいけるか?”
「もちろんだ、ゼナード。なら、この大型粒子砲で……、よし、いける!」
基地上空へと飛来した敵機は、機体からカッと放たれた閃光に巻き込まれ、敵は撃墜された。ラディエスはその凄まじい威力に自分でも驚く。
「この装備なら、圧倒的火力でミュートロンの連中を!」
こうして、地上の方に降下して来た敵勢に対し、ラディエスはすぐに遠距離からバックパックに搭載された小型ミサイルを発射。
これで彼はシグネス数機は撃墜できたものの、まだ敵機は複数機おり、その中にはマグナイドもおり、ラディエスの腕の見せ所となる。
「来たな奴らめ……。だが負けないッ!」
ラディエスは、右肩の二連ビーム砲と左肩のミサイルポッドで迎え撃つ。
敵勢はこれに怯むことなく、機銃を撃ち続ける。それに対抗し、この部隊のマグナイドは素早く動き回りながらキャノン砲を撃っていく。
「なんちゅう動きだ……。こういうすばしっこい敵なら……」
ラディエスは、右腕にマウントされたアームキャノンと、両腕に持ったビームライフルを同時に使って攻撃する。
「クソォ! まだこれからという時に……。だが負けんぞ!」
“ラディー、危ない! ここは私が!”
パティはすぐさま地上に降下し、指揮官機目掛けて光線を撃っていく。
「よし、いいぞパティ! このまま挟み撃ちにして倒すぞ」
“了解! 任せといて”
そして、ラディエスとパティは敵の隙を突いて光線を発射。
「何だとォ!」
マグナイドは呆気なく爆発四散し、この作戦でも勝利を収める。
「本当に助かったぜ」
“どういたしまして”
こうして、今回の戦いは終わりを告げた。
戦闘を終えたラディエス達は、マルクの上官である整備班班長のベン・エイムズから呼び出された。
「よぉ、ラディエス。お前がジミーに代わって隊長になったんだってな。話は聞いてるよ」
ベンは多忙であったため、なかなかラディエス達とは会えずにいた。
「ベンさん、俺達を呼び出したのは……」
「あぁ、それか! ラディエスが提案した自動式武装交換システムのことだろ? これは上層部の方に提案書を出してきた。あとはゴーサインが貰えるのを待つだけって感じだな。ひとまず今は待機だな」
にこやかな表情で、ベンは人差し指を突き立てる。
「そうですか。仕事が早いですね」
「俺は面倒事だろうが何だろうが、早めに片付けちまうんでな。また何かあったら言ってくれよ」
「はい」
彼らの戦いは今のところ上手くいっているが、まだ始まったばかりである。
そう、この戦いにおける障壁は突然やって来るのだ──




