第2話 唐突な出来事
アメリカ政府軍ワシントン支部周辺の市街地は、ミュートロン軍に襲撃され、その中でプロメテウス隊は何とか戦闘部隊殲滅を試みる。
しかし、目の前に艦隊が現れ、勝利は絶望的か。そんな中のことである。
「隊長! まさか……」
ラディエスは何かを察した。
「俺があの旗艦に単独で突撃する……。それさえ出来れば奴らは怯むだろう」
“そんなことをしたら、ジミー隊長が……”
アリカは必死になって止めようとするが、ジミーは既に死を覚悟していた。
「今はそれしか突破口が無いんだ! 俺一人の犠牲で、多くの人々の命が助かるなら……、それでいい! お前達は取り残されている市民を一人でも多く救助しろ!」
「隊長!」
ジミーは部下の静止を振り払って、そのまま敵の旗艦にたった一人で突撃した。
例えそれが無謀な挑戦であろうとも、彼はそこに勝機を見出していた。
「これでも喰らえェッ!」
ジミーはすぐさま拡散ビーム砲を構えて、光線を撃ち放った。
「何ィッ! ギャアァッ!」
彼はこの攻撃で、いとも容易く敵機動部隊を片付けるものの、それでもミュートロン軍は、怯むことなく敵艦隊はひたすら攻撃を続ける。
「あんな奴など、この主砲で!」
「させるかぁッ!」
ジミーは被弾し、その攻撃で機体の一部が破損しているにも関わらず旗艦に肉薄し、そのままビームソードで副砲を破壊。
「これでも喰らえェッ!」
彼は拡散ビーム砲で敵機動部隊を片付けた。
だが、それでも怯むことなく敵艦隊はひたすら攻撃を続ける。
「あんな奴など、この主砲で!」
「させるかぁッ!」
しかし、その直後であった。悲劇が訪れたのは。
「落ちろォッ!」
「やはり限界か……」
ジミーは、あまりにも辛い痛みに耐えながら操縦桿を動かす。
「あぁッ、隊長ッ!」
ラディエス達が戦闘に巻き込まれた市民を救助する一方で、旗艦からの流れ弾を喰らってしまい、ジミーの機体はとうとう限界を迎え、爆発四散した。
「そんな……。ジミー隊長ォッ!」
「隊長、なぜそこまでして……」
ラディエス達は、突然の隊長の死を目の当たりにして涙を流すが、彼らはそれを拭うことなく人命救助を続けた。
この後、旗艦が撃墜されたことを受け、ミュートロン軍は撤収し、戦いは一旦収束する。
翌日、ジミーの死を受け入れられず悲しむラディエス達。
何故彼は、自分達を救助支援に回してまでたった一人で戦いを背負ったのか。それだけが疑問だった。
「隊長はあれで本当に良かったのかよ……。俺達だけでどうすりゃいいんだ……!」
ラディエスは悔し涙を流し、ただ拳を握り締めることしか出来ずにいる。
自身の無能さを後悔し、あの時静止を振り払ってでも援護していれば、結果は変わっていたはず。その感傷が、ラディエスの心を締め付ける。
彼らがそんな激しく辛い悲しみに苦しめる最中、ラディエス達の軍用端末が鳴る。
「……、ディノ司令官。どうもご無沙汰しております」
“ラディエス達に伝えたいことがある。至急司令室に向かってくれ”
「分かりました」
ワシントン基地の司令官であるディノ・フラストから呼ばれ、ラディエス達は悲しみをこらえ、すぐさま司令室へと向かった。
ディノと面会したプロメテウス隊一同は、唐突な呼び出しに困惑していたものの、ひとまず落ち着いた顔つきをすることで、その感情を取り繕っていた。
「ディノ司令官、本日は一体、どのようなご用で……」
「あぁ、それについてだが……、ジミー・ガウス少佐の戦死を受けて、人事面での提案をするために君達を呼んだんだ。新たな隊長に関しては、もう決まっている」
「はい……」
ラディエスは強張った顔で頷く。
「ラディエス・ライオネル中尉、君を新たな隊長に任命する」
「えっ、自分がですか?」
思わず困惑するラディエス。彼は尚更困惑する一方であった。
「そうだ。これに関しては様々な理由があってな。ひとつは技量面や実力面のことを鑑みた結果だ。あまりにも唐突な出来事かもしれないが、明日から頼んだぞ」
「でも、隊の指揮なんてやったことないですよ?」
あまりにも突然の発言に対し、ラディエスはそれを拒む。
「確かにそうだが、これは生前にジミーが遺したメッセージが一番の理由だ」
「隊長が……?」
ゼナードは訝しげに顔をしかめる。
「メッセージに関しては、今から流そう。しかと聞くように」
そして、ディノは小型のプロジェクターのスイッチを入れた。
”プロメテウス隊の皆。このメッセージを聞いている頃には、もう俺はここにいないだろう。俺が死んでから、新しい隊長を決めるとしたらラディエスに任せたいと思っている。お前になら、プロメテウス隊の指揮は任せられると思っている。それと、パティには隊長補佐としてラディエスのフォローを任せたい。次にゼナード、お前はその頭脳を活かして戦術を練り、我が隊を勝利に導いてくれ。そして、アリカは、オペレーターとしての実力を十二分に発揮して戦闘のバックアップを頼む。最後に一つ。お前達はそれぞれ自分にしかない個性を持っている。その『個性』を強みにして、俺がいた頃以上にプロメテウス隊を強靭な部隊にしてくれ。今までありがとう。皆といた日々はとても楽しかった。またな”
そして、ビデオメッセージの音声は止まった。
だが、ラディエス達は泣くどころか、今までになく勇気に満ちた逞しい表情で互いの顔を見つめ合った。
「ラディー……」
その中でパティは、ラディエスの目をじっと見つめた。
「パティ、ゼナード、アリカ、俺は覚悟を決めたよ。俺が責任をもって、この部隊の指揮を執る! 例えどんなことがあろうと、何としても生き延びよう」
「おう! 期待してるぞ隊長さんよ」
「へへっ、ありがとよゼナード」
二人はお互いにニヤリと笑う。
「ラディエス中尉……、いや、ラディエス隊長! 改めてよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくな、アリカ。俺達の力で頑張っていこう」
ラディエスは笑顔で返す。
こうして、プロメテウス隊の絆はより深まった。
彼らはジミーの願いを実現し、第四次世界大戦を集結させることはできるのだろうか?




