出会い①
森川 瑠奈(28)職業:飲料メーカーの開発部
田中 優馬(28)職業:飲料メーカーの営業部
瑠奈「別れよう。優馬。」
事の発端は同棲してる彼氏の浮気。……勘付いてはいた。
残業だの飲み会だので帰りが遅いことが増えたから。
普段、仕事が終わったらすぐ帰ってきてくれるのに、それが少なくなったから。
そういうこともあるかと思って、最初は黙っていた。
でも、明らかに様子がおかしいと思ったのは、お金の使い方だった。
金銭管理は基本的に私がやっていて、彼と私の収入からなんとかやりくりしていた。
お互い、電気代や水道代を抑えることが出来たら500円貯金をしていった。
貯金箱いっぱいになったらどこか旅行にでも行こうかと話をしていた。なのに、ある時貯金箱から500円を数枚取り出し、ポケットに入れているのを見た。
瑠奈「何してるの?」
声をかけない訳にはいかなかった。
優馬「どれくらい溜まったかなと思って」
瑠「ポケットに入れたのは?」
優「………こんなこと言うの子どもっぽいって思われるかもしれないんだけど…」
首を掻きながら恥ずかしそうに話し始めた。
瑠「うん。今に始まったことじゃないけどね?」
優「おいw」
瑠「それで?w」
優「さっき10円玉磨いてピカピカしてる動画見てて、面白そうだなって思って………」
瑠「それでやってみたくなったってこと?」
優「そういうことです…駄目かな…?」
瑠「ピカピカになったら見せてね!」
優「…!うん!!」
意気揚々と「頑張るぞ!」と言いながら部屋に戻っていった。
何年一緒にいると思ってんの。貴方の嘘をつくときの癖くらい分かってるよ。
その時はなんで嘘をついたか分からないふりをした。知らないふりをした。
せめて、証拠が見つかるまでは信じていたかったから。
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ある夜、カゴの中にある洗濯物を色分けしていた。
優馬のポロシャツの首元に淡いピンク色。
女の私には分かる。
もしかしたら何かのインクだと言うかもしれない。
だけどこれは間違いなく口紅だと思う。
瑠「優馬」
優「どうした?」
瑠「これ、何?」
口紅の跡を見せると、少しだけ驚いていた。
優「ごめん!!先輩に誘われてキャバクラ行っちゃって断れなくて…多分その時に付いたんだと思う…」
またそれ。多分無意識なんだよね、首のやつ。
瑠「嘘ばっかり。何年一緒にいると思ってんの…」
優「えっと、5年くらい?」
瑠「そういうことじゃない!」
優「俺が悪かったから、ほらもう夜だし静かに…」
瑠「別れたいならそう言えばいいのに」
優「別れたいなんてそんな…!!俺は瑠奈と一緒にいたいよ!」
瑠「じゃあ、昨日帰ってこれたよね…?記念日、帰ってこれたよね…毎年祝ってたのに。」
優「それは仕事の付き合いで…!分かってくれよ瑠奈」
瑠「仕事の付き合いなんか今まで断ってたくせに、今更になって何も信じられない。」
優「昇進しそうなんだよ!!俺だって瑠奈のために頑張ってんだよ!!」
優馬の言葉を信じたかった。でも、嘘ばっかり。こんなに嘘つく人だったっけ。
瑠「別れよう。優馬。」
優「は!?何言ってんだよ!」
瑠「別れようって言ってんの!聞こえなかった?」
優「そんな…!っ…上等だよ。後で泣きついてもしらねえからな」
瑠「嘘つくときに首掻く癖やめた方がいいよ」
優「……」
優馬は荷物をまとめて、そそくさと出ていった。
出ていく間際、
優「あとは全部いらないから捨てといて。じゃ、お元気で。」
瑠「自分で捨てろよ!!」
声は届かず、玄関の扉が閉まる音がした。
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瑠「はぁ………飲も」
時刻は22時。
近くのコンビニで酔いつぶれるくらいの酒を買い、机の上を缶まみれにして、
ふと気が付けば0時をまわっていた。
少し夜風に当たりたいと思って、外に出た。
どこをどれだけ歩いたか分からない。暗い道をただひたすらに歩いた。
瑠「同棲前も含めたら8年だし……」
そんなことを言いながら、路地に入り空いていた椅子に座る。
瑠「はぁ…」
何かを決断するというのは勇気がいる。その分ものすごく疲れる。
明日休みでよかった…でも、明後日からきまずいだろうなぁ…。
もしかしたら、本当に会社の付き合いだったのかなぁっ………。
もしかしたら、嘘をつかなきゃいけなかった理由とかあったのかなぁ………。
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