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蓮の花一輪 ~拝啓、父へ。俺に仲間ができたぞ~

お待たせ致しました。

バタバタしてまして投稿が遅くなりました。


今回は戦闘シーンもあります。

 村長宅にて。

 レンカが旅に出る前に立ち寄ったのはそこだった。

 レンカ達親子を見守り、尚且つレンカ達親子の秘密を知る数少ない理解者の一人である。


 齢60を越えても尚衰えることのない肉体を持つ彼やその奥さんは祖父母のいないレンカにとっては祖父母に等しい存在である。


「おまえさんも親父さんと同じく旅に出る日が来たか」

「そうですね。育った所から離れるのは寂しいですが……」

「未知との出会いはワクワクするか」


 微笑むように、レンカを視界に納め話す様は祖父と孫のようだった。


「母さんと家を頼みます」


 一言二言会話をした後、レンカがそう言った。


「任せておきなさい」


 話を終え、村長宅を出ようとするレンカ。


「レンカくんや、少しお待ち」


 と、村長宅のキッチンから村長の奥さんが現れた。

 その手には風呂敷が握られてた。


「これをもっていきなさいな」


 手渡したのは弁当だった。

 村長の奥さんの作るご飯は村一番と言える程おいしく、ここ数年レンカはこのご飯で育ったといっても過言ではない。


「ありがとうございます!」


 味を知るレンカの顔が綻んだ。


「気をつけていくんだよ」

「達者でな」

「はい。たまに遊びに来ます」


 そういうと風呂敷を抱え、村に訪れていた行商人のキャラバンと共に旅に出ることになっていた為、一緒に村を出た。


 村を出て二日、特に問題が起きることなく旅は進み、近くの町であるシューマの町まで到着した。


 レンカはここでギルドに登録する予定であった。


 ギルド――それは旅人達を支援する組織団体。


 煩廻(はんかい)能力という、かつて存在した偉大な四人の祖たる存在――四祖(しそ)が伝え、教えてきた人々の魂からエネルギーを引き出し、事象に介入、改変する力。

 旅人達はその能力を旅しながら修行を行い昇華させ、各地を旅して廻ったり、その土地に根付き人々を守る存在でもある。


 彼らは僧旅(そうりょ)とも呼ばれている。


 一般人も煩廻能力が使えるが修行をした旅人達である僧旅には及ばない為、一般人を巻き込む力を使用し犯罪に発展させないように管理し、一般人を守ってもらう為に支援する目的で発足された組織。


 彼ら僧旅はギルドにて依頼を受ける。

 人に害をなす存在、廻獸を専門的に倒す討伐部門。

 盗賊から人々を守り、街や都市の防衛専門の守護部門。

 戦争に参加し戦果をあげる傭兵部門。

 素材や資源の採取や発掘を行い、商人達の運搬支援や護衛を行う支援部門。

 これらの四つがあり、各地を旅をして修行する旅人を支援し、自分に見合った部門に発注される依頼を受け、旅の資金を得たり、武具や素材をやり取りを行う。


 ギルドに所属するギルドメンバーになりさえすれば身分証になる。

 それに養成機関もあるためさながら現代の運転免許のような扱いが分かりやすい。


 依頼を終えたギルドメンバーは報告が義務な為、行商人達の護衛をしていたギルドのパーティに連れられ、ギルドを訪れたレンカ。


「お疲れ様ですイルガさん。そちらの方は?」


 話かけてきたのはギルドの各部門受け持ちの受付嬢のナターシャ。

 二十歳を少し過ぎた女性で茶髪のお下げが特徴的で、分け隔てなく接する所が人気の受付嬢である。


 話しかけられたイルガとは支援部門の依頼を専門的に行うベテランで、体格がよく角刈りで焼けた小麦色の肌を持ち、強面だが面倒見の良い40代の兄貴分的存在である。


「依頼完了の報告だ。こっちはレンカ。登録に来たんだ」

「レンカです」

「レンカさんですね。今から登録審査を致します。イルガさん達はとなりの受付へ」


 案内を受けたレンカはイルガに礼を告げるとナターシャに向き直り話をする。


「ではこちらの用紙に得意なことを記入してください」

「得意なこととは?」

「例えば狩りをしていたのでスカウト能力やどんな動物を狩っていたので討伐が得意ですなどを記入してください」

「わかりました」


(俺は狩りをしていたし、熊なら狩っていたから……スカウト能力は多少。戦闘力なら熊くらいなら……後は護衛に関してはイルガさんに聞いた程度なのでそこまでっと)


 そこまで記入後、使用武器は剣と記入し、用紙を手渡す。


「はい。ありがとうございます。こちらの情報で登録致しますね」

「よろしくお願いします」


 数秒程で用紙に記載された情報を腕輪の宝石に登録され、手渡された。

 これをつければ身分証の代わりになるのである。


「これにて登録完了です。下級の依頼を受けますか?」


 各部門に下級・中級・上級・超級の四つがあり、下級ならば薬草の採取や低級の廻獸退治を行うランクである。

 中級以降は試験を受け昇級する必要がある。


「受けます。どんなのがあります?」

「普段は依頼書を掲載した場所から剥がして受付にお持ち頂くのですが今回は特別に紹介致します。こちらです」


 内容はこうだ。


依頼書

狛獸の群れを討伐


狛獸の群れが出現

家畜への被害を防ぐ為、至急討伐されたし


報酬 一匹に付き1000G


依頼人 ギルドシューマ支部


 と記載されていた。


 狛獸(ランドス)は低級に部類される廻獸。

 主に群れを作り、狩りのように生物に攻撃する。

 全長は1メートルくらいで発達した後足で二足歩行を行い、爪が鋭く発達した前足を持つ前傾姿勢のトカゲのような姿をしており、各地に無数に存在する。

 生態として積極的に動物を襲う上に補食行動は行わずに放置するため、動物の亡骸が病原菌を発生させる媒体になるため、二次被害が予測される厄介な存在である。


 補足として廻獸は基本的に補食活動を行わずとも生きることが出来る。

 しかし、補食を目的として襲うことは少なく、生物を積極的に襲うという本能があり、毎年被害を出している。


「早速受けます。報告はこの受付に?」

「報告でしたら5つある受付の窓口のどちらでも大丈夫ですよ」

「わかりました。では行ってきます」

「はい、お気をつけて」


 こうしてギルドを出て、少し離れた町の門に到着すると門番に話をして、町から数分離れた森の浅い所に入った。


「感覚として1G=1円。1匹1000円って考えるならば10匹倒して10000円。命懸けとはいえ破格だよな。しかも狛獸討伐依頼って常駐依頼っていういつもある依頼書だし金欠の時とかありがたいだろうな」


 そう独り言を呟くレンカ。

 ちなみに狛獸は1匹ならば素人が武装し、なんとか立ち回れば倒すことはできる。

 しかし、狛獸は群れを作る。

 少なくとも3匹はまとまって行動する。

 多ければ20匹は群れを作り、上位個体が長となれば、上位個体の種類によっては倍以上の群れとなる。


 すると何処からか短いがはっきりとした悲鳴が聞こえた。

 急ぎそこまでいくと狛獸に囲まれた一人の少女を見つけた。

 年はレンカに近いようだ。

 白い法衣を着ているが、所々狛獸に引っ掛かれたのか破けており多少、血が滲んでいる。

 レンカに背を向けているため顔は見えないものの、特徴的なのは腰まで延びた灰色に近い銀髪。

 その隙間から覗く耳は、人より長く、いわゆる森人族(エルフ)であることを示していた。


 レンカは腰に帯剣した剣である瞋黙刀褝(グロートリプティー)を右手で引き抜き、逆手で握ると走り出し声をかけた。


「加勢する!」


 ()()()から()が投げ出され、枝に絡めて飛び上がると離された左手からは鎖が()()()いた。


 声をかけられた少女は一瞥すると狛獸に集中し、レンカは大声でヘイトを集め近くの狛獸の首を裂くと近い順に剣で斬っていく。


 少女も錫杖の先端に槍の穂先がついた武器で倒していく。


 数十分後、辺りには狛獸の死骸が20匹分散らばっていた。


「突然すまないな。俺はレンカ。レンカ・アスタルークだ」

「……イリア。……イリア・カーフィア」

「よろしくな」

「……よろしく」


 改めて見た少女――イリアはとても愛らしく正しく美少女と言っても過言ではなかった。

 美形揃いのエルフでもイリアレベルは少ないのではないかと言える程である。


「その格好ってもしかして」

「……そうだよ。神官」

「なるほどな。あ、剥ぎ取りしとかないと」


 廻獸の死骸は剥ぎ取り後、消えてなくなる為、獣を呼ばない為剥ぎ取りが義務付けられている。


 剥ぎ取りが終わり、互いの話をして町に戻る二人。


 町に戻る途中イリアが問いかけた。


「……あの鎖って?」

「あぁ、あれは俺の煩廻能力で作った鎖でな。どこからでも鎖を出せるんだ」

「……それはすごい」


 無表情ながら驚きの様相が見てとれる。


「イリアの能力は?」

「……障壁。……癒しも使えるけど障壁の方がメイン」

「なるほどな」


 そんな会話をしているとイリアが問いかける。


「……レンカは命を奪うことに躊躇いはないの?」

「……う~ん、あるにはあるけど俺は死にたくねぇし、殺される前に倒してしまおうって考えだなぁ。命をとらなくていい場合は積極的に取るつもりはないけどとらなきゃ不味いって時は切り替えてる」

「……そっか、私は命を取るのは苦手。……今回だって採取を引き受けたけど囲まれた。……でも決心に時間がかかった。……いくら自分の命が掛かってても」

「……」

「……可哀想って思ってしまって動けなくなる」


 それを聞いたレンカは、イリアに対してこう言った。


「イリアは優しいんだな」

「……え?」


 そう言われ戸惑うイリアは横を歩くレンカを見つめる。


「だってよ、生きてるものに対して優しいからこそ色々考えるんだろ?つまりは獣にも人間であってもその背景を考えるからこそ気にする。他はそこまで考えねぇよ?俺も含めて。だからそこまで考えるイリアは優しいんだ」

「……でも死にたくないから相手を害する。……それでも殺してしまったら色々考えてしまう。……今だって」

「……だったら俺とパーティ組まないか?」

「……なんで私と?」

「そりゃあ……」


 そこまでいって無言になるレンカ。


(イリアがかわいいからとか言えねぇしな)


 と考えるレンカ。


「……どうしたの?」


 と、問うイリア。

 発言の途中で止まったレンカを不審に感じての問いかけだった。


「あ、イヤ。……そう!優しさがある!」


 咄嗟に出た言葉ではあるがレンカの本心でもあった。


「……優しさ?」

「そう。俺今日登録したばかりだし町に知り合いいなくてさ。それに優しいイリアとならいいパーティが組めそうだと思ってさ。なんなら荒事は俺が引き受けたらいいんだし」


 そう言ったレンカはそっぽを向いていたが少し頬が色づいていた。


「……うん、いいよ」

「いいのか?」


 思わずと言ったようにイリアに問いかけるレンカ。

 その問いに無表情が綻び、微笑みながら返答するイリア。


「……いいよ。レンカがいい」

「……ッ!!」


 その返答に心臓の鼓動が少し早まったレンカ。


「お、おう。よろしくな」


 そう言いながら、そっぽを向きながら右手を差し出すレンカ。


「……よろしくレンカ」


 そう言って握手をするイリア。

 そんなイリアの頬もレンカの頬と同じく仄かに色づいていた。


◆◆◆◆◆◆


 時刻は夕方。

 無事にシューマの町に到着し、依頼の完遂をナターシャに伝え、素材を換金したレンカとイリアは、ギルドに併設された酒場にて夕食を摂ることにした。


 ギルドは大きな支部になる程、設備面も充実しており、温泉が有名なシューマの町ではギルド内に温泉と宿泊施設が併設されており、依頼終わりに温泉に浸かる者や、朝風呂として浸かり、依頼に向かう者も多い。


 レンカも依頼の完遂を報告した時に、ナターシャに温泉の場所を教えてもらい、浸かったがあまりの心地よさに顔が緩む程だった。

 ちなみに男女別で混浴ではない。


 ここには猫精族(ケットシー)達が勤めており、入浴中に装備を洗浄してくれたりする。


 綺麗になった状態で夕食を摂る二人。

 ふと、気になったのかイリアがレンカに訪ねる。


「……レンカに聞きたいことがある」

「……ングッ。……なんだ?」


 嚥下に手間取ったがなんとか飲み込み返答する。


「……パーティ名は決めたの?」

「パーティ名かぁ……確かに今後二人で活動していくには必要だよなぁ」


 パーティ名を決めてギルド側に申請しておかないと、報酬の分配の際に個人間でやり取りする必要が出てきてしまい揉め事に発展してしまう為、パーティ名と人数を申請しておくことでギルド側が分配してくれる。


「イリアは何か思い付くか?」

「……私は森とか自然を意味することが入ってると嬉しい」

「森……森や自然かぁ」

「……難しい?」


 そう言われたレンカの頭の中には無数のアイデアが浮かんでは消えていく。

 そこにイリアの質問が入る。


「……レンカはないの?」

「入れたいフレーズ?」

「……うん」


 そう言われ、レンカの口からぽつりとこぼれる。


「……旅……かな」

「……旅?」

「そう、旅。俺の親父が旅に出てさ。俺も親父が旅好きってのもあってから、昔から色々聞いてたんだよ。で、旅に出た親父を追いかけるって名目で旅に出たってのもあって「旅」って言葉には異様に引かれるって言うかさ」

「……なら旅団は?」

「旅団か……森とか自然に関する言葉使って、なんとか旅団みたいな名前考えるか」

「……うん」


 こうして数時間、互いの意見を出し合い出来上がったパーティ名。

 それは。


森翼ノ旅団(しんりょくのりょだん)ですね」

「はい」


 二人で決めたパーティ名をナターシャとは別の受付嬢に告げる。


「ちなみに個人的に気になるのですが、どういう由来でしょうか」

「森とはメンバーのイリアを表してまして、彼女のエルフの象徴の森。俺の目的である旅。そして自由に移動する翼をいれて、森などの自然を自由に旅してまわる集団。そこから森翼ノ旅団にしました」

「なるほど……お二人にお似合いのパーティ名だと思いますよ」

「ありがとうございます!」

「……うん、誉められて嬉しい」


 礼を述べられた受付嬢は、二人の姿を好ましく思いながらも素早く二人の腕輪を借りて宝石に登録すると、腕輪を返却した。


「これにてパーティ登録完了です」


 二人揃って礼を告げるとレンカがこう言った。


「あ、ギルドの宿泊施設ってまだ空いてます?」

「……私も聞きたい。……私もここについたばかりだったから」


 ちなみにレンカはシューマの町で登録したが、イリアは故郷の町で登録してある。

 二人ともこの日の宿が決まっていなかった。


「あー、空きはあるにはあるのですが……」


 煮え切らない態度に二人して首を傾げていたが、案内された先でレンカは固まった。


「……二人部屋……しか空いてないのか……」

「……私はかまわない」

「え?」


 拒否されなかった事に安堵と驚愕を覚えるレンカ。


「……レンカは変なことしないと思う」

「なんでそう思うんだ?まぁ、そんなことするつもりないけど」

「……うーん、勘?」

「いや、勘って」

「……エルフの勘は当たり易い」

「そうだとしてもなぁ」

「……嫌?」


 首を傾げながら訪ねるイリアの仕草にドギマギするレンカ。


「嫌……ではねぇけど」

「……なら大丈夫」


 こうして押し入られる形で二人でこの部屋に泊まる事になった。


 ちなみに二人とも熟睡だった。

 特にレンカは戦闘があり、思ったより疲れたのか入眠が早く、イリアも寝付きがいいのかすぐに寝るのであった。

感想や誤字脱字の報告待ってます!ブックマーク登録もしていただけると嬉しいです!


補足として煩廻能力とは、魔法における魔力、魔素を魂から取り出したエネルギー。技名が詠唱と思っていただけるとありがたいです。

某忍者漫画のように体内で練り上げ発動するって感じです。


では次回をお楽しみ

以上、weed0eでした

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