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ギルド裏の採取畑を駆け回り薬草を集めて、採取クエストを終えてギルドへ戻ると、冒険者のカイとトルの姿はなかった。あれから1時間以上経っているし、2人ともクエストを受けて冒険に出たのだろう。
私はギルドの受け付けでクエスト報告をして報酬をもらい、トラ丸とラゴーネさんとで、丸ごとジャガイモのチーズ乗せを食べに向かった。
ルノンの街は冒険者、商人ギルドがあるからか人が多く、今日も賑わっている。――お、あれは串焼きジャガイモのチーズ乗せ、フライドポテト、オヤツコロッケ、ジャガイモのガレット、ジャガイモのポタージュ、ジャガイモパン、多くのジャガイモの料理屋と屋台がいつかも並ぶ。
私とトラ丸、ラゴーネさんは目移りしながら、目的のジャガイモの店へと向かっていた。
(ふうっ〜。ねぇトラ丸、冒険のレベルってなかなか上がらないね)
《当たり前だ、マリはまだ冒険を始めたばかりだろ》
(そうだけどさぁ)
――まだ冒険者レベル1で採取レベル2。ここがゲームとリアルの違いなのかな?
乙女ゲームにはお助け札とか、守りのタネ、攻撃のタネ、魔力アップのタネ、パワーアップのタネなど冒険のレベル上げに使える、ブーストアイテムを売る店があった。ここにもあるかもと思い、探してみたけど店は見つからなかった。
――もしかして、店の外れにある魔導具店にあったりする? でもお父様から貰えるお小遣い、ギルドの報酬も貯めているから……あまり使いたくないんだよね。
出来るだけ貯めて、国外追放になった時に使いたい。
「さぁ、丸ごとジャガイモのチーズ乗せを食べて帰ろう」
《おう! ワシ、チーズたっぷりな》
「ワシはジャガイモ多めで!」
「私はチーズとジャガイモ、全部かな」
《ハハ、マリは食いしん坊だな》
「ああ、夕飯が食べれなくなるぞ」
「平気よ。動き回って、お腹ペコペコだから」
私たちは丸ごとジャガイモのチーズ乗せの店で、たらふくジャガイモ料理を堪能した。
次の日の早朝。メイドのパレットに手伝ってもらい、髪を結いドレスに着替え、屋敷へ迎えに来た王家の馬車でダンス練習のに王都へトラ丸と向う。
その迎えにきた王家の馬車は、最新の魔導馬車で魔石の力を使い空へと浮き上がり、空をかける。
「うわぁ〜トラ丸! 馬車が空を飛んでいるわ」
《なぬ? おお、これは面白い!》
いつもより早く王城につき、待っていたメイドに通された、ダンスホールで私とトラ丸は瞳をまんまるにした。――なんと、ダンスホールにいたのはデリオン殿下ではなく、紺のジュストコールを着たカイと執事服のトルがいたのだ。カイは私を見ると微笑み、トルは頭を下げた。彼らの聖獣は壁際で大人しくしている。
「なぜ? 冒険者のあなたがここにいるの?」
その質問はスルーされて、カイは私の前に手を差し伸べ た。
「デリオン殿下は急な用事があり、本日のダンスの練習に来れない。これから俺がマリの、ダンス練習のパートナーだ」
「え、ええ――⁉︎」
《なぬぬぬ――!》
私とトラ丸の、驚きの声がホールに響いた。




