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あれ? なに? この違和感……トラ丸がラゴーネさんを呼びにいっているはずなのに。私は教会の前で、その帰りを待っていたはずなのに。
どうして、ゲドウさんと応接間でお茶してるの?
《マリ、マリ!》
「あれ、トラ丸? 私……」
なにか変な感じ、誰かに操られていたような感じがする。頭の中でなぜ? なぜ? の疑問の言葉だけが回る。そんな私の肩をガシッと掴んだ人がいた。
「マリ、しっかりしろ!」
「え? あ、ああ? ラゴーネさん? え、私を何していたの?」
《よかった、正気に戻ったか? ワシがラゴーネを呼びにいっている間に、コイツがマリに魔法をかけた》
そうだトラ丸とアイスを食べた後、トラ丸はラゴーネさんを呼びに教会へいっていた。待っている私のところにゲドウさんが現れて……そこから先の記憶がない。
私は目の前でにこやかにお茶を飲む、ゲドウさんを睨み付けた。
「大丈夫だよ。ただ魔法をかけて連れてきただけ、何も悪いことはしていない」
《おい、人に魔法を勝手にかけて、連れてくるのは誘拐だ!》
「お前は人間の世界で生きているから、人間のことを理解していると思ったが。やはりワレとあまり変わらないな」
私が文句を言う前にトラ丸とラゴーネさん、2人が怒りを表す。その為か私は怒りを鎮めて冷静になった。ゲドウさんの表情は笑っているけど、心に中で"なに"を考えているかわからない――少し不気味だと思う。
ラゴーネの言葉にククッと笑い。
「人? あんな野蛮人は理解したくないね。ボクはボクさ――ねぇマリちゃん、トラ丸くん。さっきの書庫で、君たちの念話での会話聞こえていた」
「え?」
《なに!》
「トラ丸くん、毛を逆立てない。仕方がないんだ……ボクの方が色々と優れてるからね。おのずと聞こえてしまうのだよ」
《そうか》
書庫での会話をゲドウさんに全部聞かれた? ……別に、悪口は言っていないし。とら丸とは万能の実、奇跡の植物の話しかしていないから、ゲドウさんには関係ない。
「私に何のようですか? 書庫のトラ丸との会話で、私たちは変なことは話していませんよ?」
「うん、そうだね。でも、ボクが。マリちゃん達が探している万能の実や、奇跡の植物を知っていると言ったら、マリちゃんはどうする?」
「え?」
クスクスと、楽しそうなゲドウさんの瞳がこちらに向いた。どうすると聞かれて、ゲドウさんに聞きたいと言ったら、何かお願い事をされる?
ーーでも今は、そんなこと言っていられなんじゃない。
「ほんと? ほんとうにゲドウさんは万能の実の事を知っているの?」
《おい! マリ、よく考えろ》
トラ丸が止めるのはわかる。
彼は、どこか危険な感じがする。
「でも、トラ丸。万能の実のことを知っているって言ったよ」
「そそ、ボクは何も危険じゃないよ。ちょっとマリちゃんに頼み事があるだけ」
《その、お前の頼みごとが! マリを危険にさらすかもしれない!》
トラ丸が頭から降りて毛を立てながら、ゲドウさんと見合った。




