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それから2日後。同じようにベッドで目が覚め、となりで寝ていたトラ丸にめっちゃ怒られた。ヴォルフ様は1日目の深夜、数分だけど私の様子を見にきたとトラ丸は言った。
「え? ヴォルフ様が来てくれたの?」
《ああ。眠るマリを撫でながら、すごく悲しい顔をしていたぞ》
「ヴォルフ様……明日になったら、お礼の手紙とハンカチを送るわ」
《そうしてやれ……あまり、コチラに来られないみたいだし。あと、マリにこの箱を置いていったぞ》
トラ丸から貰ったのは、私の両手に乗るくらいの大きさの木の箱。この一見変哲のない箱だけど。なかに魔法陣が記されていて手紙、小さな贈り物を入れると、ヴォルフ様が持つ木の箱に届く魔導具。
その魔導具の箱に手紙とハンカチを送った3日後。返ってきたヴォルフ様の手紙に"ハンカチありがとう""無理をしないでくれ""時間を見つけて会いに行くから"と書かれていた。
ヴォルフ様に会いたくても、コチラからは会いに行けない。
少し寂しいけど目標は見つかった。"万能の実"その実が見つかればヴォルフ様のお父様が助かる。次の日から、ヴォルフ様が貸してくれた本を部屋で読み、家の書庫で本を探したが、万能の実に関する書物は見つからなかった。
ーー簡単には見つからないか。
嫌だけど……王城の書庫か、王都にある国立図書館に行くしかない。
「ねぇトラ丸。お父様に許可がもらえたら明日、私を王都まで連れていってほしい」
《王都? 王城の書庫に行くのか……連れて行くのはいいが、アイツに会うぞ》
「ぜったいに会うよね。でも、デリオン殿下に何を言われても気にしない。私には探したいものがあるわ」
《マリの探したいものか。よし、わかった。王都まで、休みながらになるが行こう!》
「ありがとう、トラ丸!」
次の日の早朝。私は大きくなったトラマルに乗り、王都に向かっている。昨夜、仕事から戻ってきたお父様、お母様から外出の許可。王都への入都、王城への入城と書庫の許可書がもらえたのだ。
『マリーナ、気を付けて行きなさい』
『はい、お父様』
『マリーナ、トラ丸に乗るときは姿を消すこと。魔力が減ったらすぐ魔力石を使いなさい』
『はい、お母様』
《危ない事、面白そうなものに首を突っ込まない》
『わかった。気をつけるね、ジロウ』
――私がヴォルフ様のことで、落ち込んでいると思ったのかな? それとも私がお父様とお母様の許可なく、王都へと飛んで行くと思ったからかも。
《マリ、忘れ物はないか?》
「うん。昨日のうちに"王都に行ってくる"とヴォルフ様へ伝えたし、ハンカチ、オヤツ、飲み物、魔力石。お父様にいただいたお金と、何かあったときお母様を呼べる魔法陣の紙をすべて。ヴォルフ様に貰った鞄に入れたわ」
《よし、では行くぞ》
「おう!」
私とトラ丸はゆっくり王都へと向かった。道中、私かトラ丸が疲れたら休憩をとり、何もなくお昼前に王都へと着いたのだった。




