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毎日が楽しい。ラゴーネさんがたまにうちへポテチを食べに来たり。ヴォルフ様に風魔法と植物魔法の基礎を習い、剣を習う毎日を過ごしている。
「明日の誕生会は午後だったよね」
明日の午前中は、ヴォルフ様がクエルノ大国に報告をするために戻る日。みんなでお茶をしながら、明日の日程を話していた。
「はい、誕生会は午後からです。ヴォルフ様と少しの間だけど、同じ11歳になりますよ」
私の言葉にヴォルフ様は瞳を大きくする。
そして、優しく目を細めて笑った。
「ハハッ、その考えは思いつかなかったな」
《そんなこと、マリにしか思いつかんな》
《主人と同じ歳、同じ歳!》
《ポ、ポ》
「2ヶ月だけ同じ歳だね」
「違います、2ヶ月もです」
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そして迎えた私の11歳の誕生日。午後の休暇を取ってくれたお父様とお母様、ヴォルフ様とシラさん、トラ丸、クロ君、ポ君。カルロの家族、メイドのみんなが私を祝ってくれる。
昼食後、パレットに手伝ってもらい。ヴォルフ様に貰ったワンピースを着て、ウキウキしながら彼の帰りを待っていた。だけど、午後になってもヴォルフ様達は戻ってこなかった。
夕方になってお父様とお母様に連絡が入る。
連絡を受けた、お父様は王城に馬車で向かい、お母様はジロウと向かう前に私に話した。
「マリーナ、よく聞きなさい。ヴォルフ殿下の父――クエルノの国王陛下がお倒れになったの。まだ病状はわからないのだけど……ヴォルフ殿下は今日お戻りになれないわ」
え?
「マリーナの誕生会は悪いのだけど、日にちを別の日にして祝いましょう」
「はい……お母様、お気を付けて向かってください」
ヴォルフ様のお父様が倒れた? ――パッと目の前に何か映る。『私の植物魔法の力が必要? 嫌よ。愛しのデリオン殿下とあの子の応援をするあなたを、なぜ私が助けなくてはならないの?』その言葉が浮かんだ後――ズキ、ズキと頭に痛みが走る。
『カッツェ嬢、頼む――僕が何でもする』
必死に頭を下げる、白銀の髪と青い瞳の男性は誰?
まさか、ドキドキ鼓動が上がり、汗が滝のように流れる。
『あなた、リリアンを襲いなさい』
『なに? 僕に友を襲えというのか!』
《マリ? マリ?》
「「マリーナお嬢様?」」
あ、ああ……思い出した。これは乙女ゲームのヴォルフ様ルートの……その1。ヴォルフ様はヒロインと結ばれず。ヒロインはデリオン殿下と結ばれる。
そして婚約破棄の後。牢屋に入れられたマリーナの前に現れたヴォルフ殿下。
『偽物の薬を渡したな……!』
『あら、気付いたの? フフ、あなたが役に立たなかったせいよ』
『なに! 父上が亡くなったのは……お前のせいだ! 特別な能力を持っているくせに……』
と、魔法で殺されてしまう。
「ハァ、ハァ……」
《しっかりしろ、マリ!》
でも、おかしいわ。この話って……学園の2年目の出来事じゃなかっ、た? ――ここで私の意識は途切れた。




