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王都に行って3日後。朝の日課のジョギングと、今日の授業あとテラスでまったり読書している。カカナお母様とジロウは魔術師達を連れて、王国中の森の調査に出ていると言っていた。
「ウチの国でも1年に一回兄上が騎士団、魔術師を連れて森の調査は行っているよ。その森に危険な魔物がいないのか、植物がないかを調べて、いた場合はギルドに依頼を頼むんだ」
「ギルドにですか? 私、冒険者ギルドに登録したかったけど――成人していないと、ギルドに登録できないって本に書いてあったから、いまはあきらめてる」
《マリ、そのまま諦めろ》
「ええ、スライムくらいは見たい!」
ファンタジーのスライムって見た目と、ポヨンポヨンした動作が可愛い。本物は? って気になる。
「ハァ? スライムが見たい? マリーナやめておけ……スライムはなかなか危険な魔物だ。王都の本屋でモンスター図鑑を買っていなかった? それに載っているから見た方がいい」
ヴォルフ様にそう言われて、図鑑と取りに部屋に戻るついでに厨房に寄ったけど、いつもいるカルロの姿が見えなかった。
(オヤツ貰おうと思ったんだけどなぁ。この時間マサさんとリヤさんは買い物でいないから、カルロは裏庭でお昼寝中かな?)
空いた時間、屋敷の裏庭で自作のハンモックで昼寝しているって言っていた。表の庭と違い木々が生い茂り、日陰で涼しいんだって。"いいな"ってトラ丸が言っていたと言ったら、姿が見えないけどトラ丸用のハンモックを作ってくれた。
裏庭、裏庭~
「カルロ?」
あれ? いつものハンモックにいない。ちょうど見かけたメイドのパレットに聞くと、カルロは風邪を引いて午後から休んでいるらしい。
(あらら、風邪か~カルロの様子は後で見るとして。今日のオヤツどうするかな? 王都で買ったクッキーと、私が2日前にカルロの横で作ったポテチでいいっか)
うーん。飲み物は私でも作れるレモン水かな。お父様に火を使わないんだったら、厨房に入る許可は貰っているから、サッとレモン水を作ってテラスに戻る。
「ヴォルフ様、トラ丸、クロ君、シラさん、ポ君~オヤツにしましょう」
《オヤツ!》
《おやつ~》
《ポ、食べる》
お昼寝中のトラ丸達も目を覚ました。本を読んでいたヴォルフ様、側にいたシラさんも集まりお茶の時間がはじまる。
「カルロが風邪で休みだったので、レモン水と王都買ったクッキーとポテチを持ってきました」
私は厨房から持ってきたオヤツを並べ、作ってきたレモン水いりのピッチャーとコップをテーブルに置いた。ヴォルフ様はレモン水入りのピッチャーに氷魔法を使って、小さな氷をコロンコロンといれて冷やしてくれる。
「ヴォルフ様、ありがとう」
「うん。あれ? このポテチいつもと見た目が違うね」
《うぬぬ? 少し揚げすぎか?》
トラ丸、みんなは好きなポテチから手が伸びるけど。いつものとは違う、少し揚げすぎのポテチに気付いた。
「えーっと、そのポテチ……2日前にカルロの横で私が作ったポテチなんです。見た目とは違って、味はそこまで悪くないから……食べてみて」
《何? マリの手作りか――どれどれ。うーん、まあまあかな》
「やっぱり?」
味にうるさいトラ丸。
「マリーナ、美味しいよ」
「はい、美味しいです」
《うまうま》
《ポも、ウマウマ》
「ほんと? よかった。ヴォルフ様、図鑑を持ってきたので一緒に見ましょう!」
「ああ、見よう」
私たちのお茶の時間は続くのだった。




