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「ええ、食事ですか? 嬉しい。ゲドウ様のご用事が終わるまで待っています」


 続いて、可愛い女の子の声が聞こえ、隣の扉が閉まる音がした。ゲドウさんがこちらの応接間に来るようだ。私達はお礼が終わったら、すぐに教会を帰る予定。


 コンコンコンと扉が鳴り、扉が開く。

 今朝、王城で出会ったときと同じ服装と満面な笑みを浮かべた、ゲドウさんが入り私達に頭を下げた。


「先ほどはどうも。ヴォルフ殿下、マリちゃんお待たせしてすまないね。よくいらっしゃいました」


 私達もソファから立ち上がり、礼をする。


 応接間のソファは1人掛けが2つ、3人掛けのソファが置いてあった。私とヴォルフ様は1人掛けのソファにいて、3人掛けのソファにいるラゴーネさんとグラウ君はゲドウさんが来ても立ち上がらず、座ったままでいた。


 その姿をみても、笑顔のままのゲドウさん。

 ヴォルフ様も笑顔のまま。


「お気になさらず。ここへ寄ったのは、ゲドウさんにお礼を言いにきただけです」


「はい、そうです。たくさんの魔力石の元をいただき、ありがとうございました。ヴォルフ様と大切に使います」


 スカートをつかみ、頭のトラ丸と一緒に礼をした。


「ああ、アレね。フフ、マリちゃんが喜んでくれてよかった。ところで、オオカミ君は飼い主の所に帰らないのかい? 今、1人で寂しいんじゃない?」


「あ? 飼い主? アイツは俺の飼い主じゃない。ただのツレだ」


「そうでしたか。ヴォルフ殿下、マリちゃん達を夕食にご招待したいのですが、いかがでしょう?」


 夕食か~隣の部屋にいる女の子の事と。ここでは、どんな料理がでるのか気になるけど。ヴォルフ様をみると少し考えるふりをして、フウッと息を吐き。


「すみません。夕食の誘いは嬉しいですが、大切なマリーナの帰りが遅くなりますので、またの機会にお誘いください」


 た、た、大切な⁉︎


 ヴォルフ様は胸に手を当て、小指のシルバーの指輪をみせた。ゲドウさんの視線が私の方を向き、左手の小指を見て彼の表情が一瞬、歪んだがすぐに笑顔にもどり。


「ああ、そうでしたか……これ以上、引き止めることはできませんね。お気を付けてお帰りください」


 渋ることなく、止める事なく、すぐに引き下がった。 

 このヴォルフ様に貰った魔道具の指輪……何か意味があるの?


「お招きありがとうございました。僕達はこれで失礼します」


「ありがとうございました……あ、そうだった。家でポテトチーズのクッキーを作ってきたんです。よかったら食べてください。これがゲドウさんの分で、ラゴーネさんの分……グラウ君はごめんね」


 ヴォルフ様に貰ったバックから取り出し。

 1人分ずつ包装した、ポテトチーズのクッキーを渡した。


「ん? オレはここに元々いないもんだ。ラゴーネに貰うから気にするな」


 グラウ君は"ニシシ"と笑ってくれた。いま渡したポテトチーズを使ったサクサククッキー。味はヴォルフ様、両親とトラ丸達に食べてもらい「美味しい」を貰っている。


(甘さ控えめで、ジャガイモとチーズの風味でサクサクの食感だから、いくらでも食べられちゃうんだよね。お父様とお母様はワインに合うって言っていたし)


「マリちゃん、ありがとう。後でいただくよ」


 ゲドウさんは包装を袖にしまい。ラゴーネさんはさっそく包装を開けて、グラウ君と取り合って食べはじめた。


 サクサク、サクサク!


「おお、うまい! グラウ! このクッキーはワレのだ!」

「ラゴーネ、少しくらい良いだろう!」


[ヨクナイ!]


(ハハ、よかった。ヴォルフ様と話をして、ラゴーネさんの分を多めに包んで……)


「モグモグ――マリ、ヴォルフ気をつけて帰れよ。コレ、なかなか美味いな! ありがとう!」


「おお! 美味い、うまい!」


「喜んでくれてよかった。ではゲドウさん、失礼します」


「うん。マリちゃん気を付けて帰るんだよ。またね」


 もう一度礼をして、教会の応接間を後にした。




「またいらしてください」「お待ちしております」多くの聖職者たちに笑顔で見送られ、停めてあった馬車に乗ってすぐ"フウッ"と息を吐き、私達は体の力を抜いた。


 なんだか疲れていた。


「ゲドウさんの笑顔、迫力があったね」

「ああ、実力のある人は違うね。父上にお会いするときを思い出したよ」


 応接間では"ずっと"黙っていたトラ丸とクロ君は。


《ワシは威圧感を感じた》

《主人の父? わかるぅ~ボク、あの場所で萎縮しちゃった》


 そう話すと、馬車のソファでまったりしはじめた。


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