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ラゴーネさんはドカッと空いているソファに座り、首についている黒色の首輪をさわり、元の姿に戻る。そして隣のソファにいる魔獣グラウに。
[ナンダ? オマエモ、ココニイタノカ……ヨク、アンナノト、イッショニイラレルナ]
ドラゴンのときに発した言葉で話した。
その言葉が通じたのか、魔獣グラウはチラリとラゴーネさんを見て面倒臭そうに。
[シカタナイダロウ。マダ、コノセカイデ、メヲサマシタバカリ。チカクニ――アイツ、シカイナカッタ]
ラゴーネさんと同じ言葉で返した。こ、この言葉はもしや魔物語? モンスター言葉? 魔獣語?
[ソウナノカ?]
[アア。ニゲテモ、ドコニイケバイイ? ネムッテイタバショハニハ――カエレナイ]
[ダヨナ、ワレモソンナカンジダ……ダカラトイッテ、ココニ、ナガイスルキハナイ]
なぜか私の方を見ながら、2人だけの会話が続く。えーっと。2人は私に何か訴えかけているの? 頭の上でまったりトラ丸も、この言葉がわかるから。
《マリ、聞く耳を持つな》
〈う、うん、知らんぷりする〉
プイッと横を向いた。
[オイオイ、ソレハナイダロウ?]
[ホントウニ、ツウジテイルナ――メズラシイ]
[ダロウ、ワレハ――コノフタリニ、タスケラレタ]
〈待って! この言葉はドラゴンのとき、ラゴーネが話していた言葉だね〉
《ボク、聞いたことがある》
《ポ、も》
〈僕たちにもわかるよう話した方が、君たちの言い分も分かり、話が進むんじゃないかな?〉
ヴォルフ様の言葉に2人は見合って頷いた。
「そうだな」
「仕方がないか」
ラゴーネさんとグラウ君が話し始めたことに、私達は驚くしかなかった。なんと2人の封印を解いたのは。今、ゲドウさんと話している女の子だと言ったのだ。
「封印が、そんなに簡単に解けるのか?」
「簡単だな――まず"封印石"を壊せばいい。そうすれば1年くらいで封印が解ける。はやく封印を解くには石を壊した後、ワレは酒で、グラウはリンゴ――生前の好物をひと月かふた月、封印の場所に置けば良い。そうすればワレ達が目を覚まし封印は解ける。それより早くしたかったら名前も呼べばいい」
なにその簡単な封印の解き方は!
あ、全年齢対象の乙女ゲームだ、難しいことは運営がしないか。
ゲームのラゴーネさんの場合は誰かが封印石を壊してしまい、1年後に復活した。
しかし今回は封印石を壊して、お供え物をして、彼らの名前を呼んだとなれば。女の子が彼らの名前を知っていることになる。カカナお母様と魔術師たちはラゴーネさんの封印の場所を守っていたから、彼の名前を書物などで知っていてもおかしくない。
だけど、魔獣グラウの封印の場所と名前は知らないかもしれない。
私も知らないだけで、乙女ゲームにグラウ君が出ていた? となれば。封印を解いたのは私と同じ、転生者じゃないとできないじゃない?
驚きのなか、隣の部屋の扉がガチャッと開く音が聞こえて。
「すみません。応接間にお客様を待たせていますので、しばらくお待ちください。話が終わりしだい夕食の席をもうけますので、そこで詳しい話をしましょう」
丁寧に話す、ゲドウさんの声が聞こえた。




