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教会の応接間に案内された。ゲドウさんは私たちを待っていてすぐに来ると思ったが。いま、来客が来ていると他の聖職者が伝えた。
「すみません、しばらくお待ちください」
案内された応接間にはお茶とケーキが用意され、風魔法の植物魔法の本が数冊と、魔法基礎の本が数冊準備されていた。
それを見たヴォルフ様は「マリーナの魔法属性も把握済みか」と呟くと。腕を組み、頭をかひねり"何処で属性を知ったのだろう? 測る装置などないはずなのに"とも言った。
(ヴォルフ様は前に水晶玉で測った以来、魔法を測る装置には触れていないわ)
「あ、そうか……ラゴーネだな。奴が頻繁に屋敷に訪れていたのはこの為か。で、マリーナの属性がわかり、あの石はそれに対してのお礼の石ということだな……ほんとう、油断ならない人だ」
「そうですね。3日後に来るとおっしゃいましたが。その日以降、彼は来ていません」
《ああ、来ていないな》
「マリーナの属性がわかり、何か対策でも立てているのか」
テーブルを囲み、私とクロ君、ポ君を置いて話が進む。ラゴーネさんはポテチ泥棒だけではなく、私の属性をさぐりに来ていたのか……ポテチ好きのいい人だと思ったのに。
みんなが話していて暇なので、紅茶を淹れることにしたが。ここに家でよく飲んでいる、お気に入りメーカーのアップルティーが用意されていた。そのメーカーはヴォルフ様がお土産として持ってきた――クエルノ産の高級アップルティー。
「ヒィ、紅茶の好みまで知られてる!」
私の声に、トラ丸が飛んできて頭に着地した。
《なに? ゲッ本当だ……マリの好物、苺のケーキ、アップルパイ、クッキーは山ほどあるが。ポテチ、フライドポテトがないな》
「そうだね。……ラゴーネさん、あれだけ食べたけど作り方がわからず、どちらも作れなかったのかな?」
《うむ》
「だろだろうね。ポテチ、フライドポテトはこの国だけではなく、僕の国にもない料理だからね」
なんですって⁉︎
(そういえばヴォルフ様と出会った頃、ジャガイモが苦手だって言っていたわ)
あ、その理由。さっき読んだジャガイモの本に芽に毒があると言われ「悪魔の植物」とも呼ばれていた。いまは食べ方を知り、主食として食べられてるけど。
(まだ昔に言われてきた「悪魔の植物」が根強く残っていて……苦手な人もいるのかも)
ゲドウさんは来客の方との話が長引いているらしく、15分くらい待つが現れない。ここを4時過ぎに出たい私達は"今日が無理なら、またの機会で"と伝えて帰ろうとした。
そのとき"ガチャっ"とノックなしに応接間の扉が開き、1匹の黒い犬? が入ってきて空いているソファに飛び乗った。
《ククあの女、あの男に取り入ろうと必死だな……クワァ、それを待つこっちの身にもなれよ……ん? 誰だぁ、お前ら?》
黒犬は私たちに気付き、警戒した。
「いきなり入って来て、そっちこそ誰よ!」
《なに奴?》
「この気配、君は魔獣か?」
《魔獣? みんなを守る!》
「ヴォルフ様、マリーナ様、ソイツから離れてください!」
《ポ、守る》
黒い魔獣と見合った。




