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昼食を終えた私たちは古本屋めぐり、ケーキ屋、日用雑貨店をまわり王都観光をしている。王都の中は乙女ゲームの中で見てきた店、ヒロインとヒーローがデートをする公園などもあり。
聖地巡礼だ! と心の中で叫びウキウキしていた。
(乙女ゲームで見てきた中世風の店並、公園もいいわぁ~でもゲームの悪役令嬢は小さい頃、デリオン殿下の婚約者に選ばれてから。王城に通い厳しい王妃教育を受け、屋敷でも礼儀作法、音楽、ダンスの家庭教師がいたと語られていたから……こんな風に遊ぶ時間なかったかも)
私が、もしデリオン殿下に嫌われていなかったら……乙女ゲームの悪役令嬢と同じ運命をたどっていた。そう考えたら、嫌われていてよかった。やさしいヴォルフ様、クロ君達と知り合えたし。トラ丸にだって会えた。
「マリーナ、日が暮れる前に教会にいくか」
「え、もうそんな時間なの?」
時計台の時計を見れば、時刻は3時。たくさんの店をまわり、お揃いの石鹸、ハンカチ……古本屋でモンスター図鑑、植物図鑑。家族とメイドたち、カルロの家族。そして、みんなで食べるお菓子をお小遣いで買える範囲で買い。ヴォルフ様に貰ったマジックバッグにしまった。
「王城でゲドウさんに挨拶もした。日が暮れる前に王都を出たいから、お礼を言ったらすぐに出ようと思う」
「はい」
《そのほうがいいな。長居は禁物》
《そうだね》
頭のトラ丸はあまり、乗り気ではないみたいだ。
私たちが向かう教会は王都の東入り口近くにある、茶色いレンガの塀に囲まれた真っ白なレンガで造られた建物。この教会、乙女ゲームではヒロインに芽生えた聖なる力を認め、後ろ盾となる。
(教会の裏には孤児院と医療院もあって、デリオン殿下とのイベントともう1人の攻略者対象に会うため、フラグ回収に通ったなぁ~)
この教会。乙女ゲームの画面で見るより教会は白いレンガ、細かな彫刻、窓などの建物が立派で美しい。ゲームの中でだったけど、令嬢達に人気なのもわかる。
ヴォルフ様は教会の外にいた聖職者に話しかけると「よくいらっしゃいました。ゲドウ様が中でお待ちです」と笑顔で応接間に案内される。その途中、出会った聖職者達にも「いらっしゃいませ」と笑顔を向けられた。
〈……ふぅっ、僕たちの容姿に加え。僕たちがここへ訪れる連絡が隅々までいき渡っているね……楽だけど、少し不気味だ〉
ヴォルフ様は辺りを見回し、息を吐いて念話でつぶやいた。その気持ちわかる。知らない人達が自分たちを知っている――あまりいい気分ではないかも。
《なにやら敵陣に入った気がする》
《ボク、怖い》
《ポも、プルプルする》
みんなも同じ気持ちのようだ。