65
「油断ならないな。あの人が"何"を考えているのかわからないが、マリーナを狙っている」
《怖い人だね》
「僕達と、マリーナを引き離そうとしたのは確定だね」
《うん。すぐに気付いたけど》
私を引き寄せたまま、ヴォルフ様とクロ君は会話を始めた。私を待っていた2人にも何かあったのかな? 側近のシラさんとポ君の姿が見えなかった。
でも。いまヴォルフ様が来てくれなかったら「はい、お願いします」と。口が勝手に動き、ゲドウさんについて行っていたかもしれない。
よかった、彼らが来てくれて。
「ありがとうございます、ヴォルフ様、クロ君」
《マリが、アイツに操られそうになっていてぞ》
「そうだね。彼の魔力が残ってる、なにかしらの魔法は使ったようだ。マリーナを狙っているが、聖獣のトラ丸もかも」
《なに? ワシも狙われている?》
「ああ、この国に聖獣はジロウとトラ丸しかいないし。憑依、行動、戦闘、守りもできる特別な存在だから」
ヴォルフ様はそれに、ドラゴンのラゴーネさんの声を聞き、呪いが見えたのは私達だけだとも言った。"少し待って"と額に指を当てウンウン頷き。
「フウッ、そうだったか。マリーナ、トラ丸、書庫に移動しよう。2人に話すことがある」
「はい」
《おう》
引き寄せるときに繋いだ手をヴォルフ様は離さず、書庫に向かった。
+
彼と手を繋ぎ書庫に向かうと、書庫の前にシラさんとポ君が私達の到着を待っていた。ヴォルフ様はシラさんに目で合図すると、彼は書庫の扉を開いた。
〈マリーナ、トラ丸、書庫での会話はしばらく念話で話そう〉
〈はい、わかりました〉
《わかった》
シラさんとポ君は警護にあたり。書庫の読書スペースで会話を念話にして、ヴォルフ様は私がトイレに行っている間のことを話した。
その話に驚くしかない。
〈私の幻影?〉
〈うん。マリーナがトイレに行きしばらくして、デリオン王子の怒鳴る声が聞こえた。アイツまたマリーナにちょっかいをかけているんだと。向かおうとした僕たちの前にマリーナが現れたんだ〉
《ウンウン「お待たせいたしました」って帰ってきたよ》
お、お待たせいたしました?
〈そう、いつものマリーナと違って優雅だったかな?〉
〈は、い? いつもの私とは違い優雅?〉
〈だって、マリーナだったらさ。お待たせ、ありがとう! って帰ってくるだろうし。いつも元気で可愛いから、すぐに幻影魔法だって気付いたよ》
〈⁉︎〉
《サラッと言ったぞ!》
〈フフ、本当のことだからね。シラとポに任せて、僕とクロはマリーナの所に駆けつけたんだ。まさか今日がお茶会の日で、デリオン王子の他にゲドウさんまでいるとは思わなかった……(先に指輪を渡しといてよかったな)さてと時間もないから調べもの始めようか。えっと、風魔法と植物魔法あと生活魔法だったよね〉
〈は、はい、はじめましょう〉
当初の目的の調べものをはじめた。




