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プンプン。ゲドウさんはヴォルフ様のこと使いすぎる。隣国の王子様で私の先生なのに、またこんなにたくさん石を寄越すなんて。
お腹いっぱいになったトラ丸が、椅子の上で丸くなるのを横目に。
「今回はどれだけ入っているのやら?」
パカァ~っと。ラゴーネさんが持ってきた木箱を開けた。中には魔力石となる白い石がどっさりと手紙が入っていた。手紙? 手に取りひらくと「【拝啓~マリちゃん元気ぃ~おじさんは元気だよぉ~】」ちょっマリちゃん? フフ、たくさんの石を渡しといて呑気だなぁ。
続きは。
「【前にヴォルフ殿下と一緒に作ってもらった、魔力石質は実にいいものばかりだった。そのお礼に質は落ちるけど魔力を込めれば魔力石になる石を、ラゴーネに持たせたから遠慮なく使って】」
「え? 遠慮なく使って?」
「どうした? 表情豊かに読んでいるが、その手紙になんて書いてあるんだ?」
「それがね」
クロ君と戯れるヴォルフ様にも、ゲドウさんからの手紙を見せた。最初の出だしでヴォルフ様は眉をひそめ、手紙を読んでいくウチに"ほぉ"っとうなずいた。
「ラゴーネが3日と言って驚いたが。手紙の内容だと練習用の石を贈ってくれたんだね。マリーナはこれを使って、魔力の扱いを練習すればいい」
「ヴォルフ様も持っていく?」
「んー少し貰おうかな。マリーナ手を貸して」
ヴォルフ様は箱から一粒取り出すと、私の方に手を出した。その手を掴むと魔力を流して石を透明な魔力石に変える。いま彼は私にこれくらいの魔力で作れると、魔力量を教えてくれたのだ。
「よし。今日はこれを宿題にしようかな? やってみて」
「はい、やってみます!」
意気込むと"うん、頑張って"とヴォルフ様は微笑んだ。
「それと手紙の最後に『暇だったら教会にも遊びに来てくれていいよ~』と書いてあった。来週の頭、王城の書庫に行くついでに少し教会にも寄ろうか。これだけたくさんの石をもらったんだ、ゲドウさんにお礼を言わないと」
ヴォルフ様の言う通り。魔力石になる石を手に入れるには結構なお金が必要。前、お母様はポンと何も言わず私にくれたけど……すごく高価で、高いものだと知った。
さらに魔力を込めて作った魔力石となれば、質に限らず倍の金額で取引されているらしい。それだけ魔力石を作るのは難しいのだ。
「はい、お礼を言いに教会へ行きましょう。でも、ラゴーネさんの3日ってなんだったんだろう?」
木箱の中身は練習用の石だったし。
「わからんな。ラゴーネの事だから『3日後、ジャガイモの料理を食べに来るから、用意しとけ』かもな」
「アハハ、そうかも」




