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私は悪役令嬢マリーナ! 魔法とモフモフ達に囲まれて幸せなので、王子様は嫌いのままいてください。(第一章完結)  作者: にのまえ


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 昔々、ロベルト国に生まれた勇者は仲間と力を合わせ、巨悪なドラゴン軍を退治して封印して、のちに国王になった。と、ロベルト国の歴史書に書いてあった。


「この歴史書に書いてあることが本当なら、デリオン殿下は勇者の血が流れているという事?」


「見えんが、そう言うことになるな」


(へぇ~乙女ゲームにそんな話あったかな?)


 うーん。デリオン殿下が推し、いや最推しでヒロインとの"ラブラブストーリー"しか見ていなかった。あの夜もデリオン殿下が1番輝く、婚約破棄の場面を見ていたし。ほかの攻略者のルートはコンプリートする為に、一周するだけで物語は全部スキップしていた……


(はっ! 私って、偏ったゲームの知識しかない? ……まずい? いいや、知らないってことは。この世界を存分に楽しめるってことじゃない!)


「デリオン殿下に勇者の血ねぇ。それで、この歴史書に載っている封印されたドラゴンがラゴーネさんかぁ~普通に隣にいるし、揚げたてのポテチ食べてるし、変な感じ!」

 

「変ではないぞ! 驚いただろうマリ! ワレは強きレッド・ドラゴンのラゴーネだ! いまはしがない竜人族のラゴーネだがな」


「もう、来た初日に聞いたよ。それで? ラゴーネさん、今日はなんのようですか?」



 1時間前。ヴォルフ様との魔法授業とあと、テラスでアイスティーとポテチを食べながらまったり読書していた。そこに「よっ」と、ツノと尻尾を隠し、シャツと短パンといった気楽の姿で現れたラゴーネさん。


《ゲッ! ポテチ泥棒? また来たのか!》


 頭の上のトラ丸が「また来やがったのか!」"シャー"と珍しく威嚇した。わかる、わかるよ……ヴォルフ様もクロ君も"またか"といった表情。



 ドラゴン騒動から1ヶ月以上が経ち。彼がかけられた呪いも解呪は出来て喜ばしいのだけど。あなた、ウチに来すぎじゃない? またゲドウさんのおつかい? それとも「ゲドウさんが会いたい」と言っていたから王都にある教会へのお誘い? 私はまだ子供だよ、そんな大それた力なんてないよ。


(ヴォルフ様と、もっと魔法の勉強がしたいのぉ!)


 それに。あの日の後から大変だった。ドラゴン討伐(陛下には伝えている)を祝いする舞踏会が開かれ王城へと招かれた。私はヴォルフ様にエスコートしてもらい入場して、すぐデリオン殿下と遭遇した。


「マリーナ嬢! ヴォルフ王子も何をしに来たぁ!」


 彼が子供の様に突っかかってくる。めんどうだからと無視するが、後をついてくる。


 無視をしながら会場を進んでいくと。ドラゴン討伐で活躍した騎士団の方と魔術師の方が笑顔で話しかけてくる。そこにゲドウさんとラゴーネさん、聖職者の方が話しかけてくる。まだいたデリオン殿下が「なぜ、お前が俺の部下と親しげに話してるんだぁ!」と喚き散らしはじめる。


「「「?」」」


 周囲の"またか"といった表情を「ウンウン。デリオン様、そうですのねぇ」と。間違った解釈をして吠える吠える。


 そして、遂に。


《いい加減にしろぉ! 小童が!》


『招待状はいただいている。デリオン王子、そんなに嫌ならボクとマリーナに話しかけるなぁ! ついてくるな! 不愉快だ!』


《ボクも怒っちゃうもん》

《ポも、ポもプンプン!》


 トラ丸、ヴォルフ様、クロ君、ポ君の堪忍袋の緒が切れてしまって、みんなを宥めるのが大変だった。もう疲れたと思ったとき、会場に音楽が奏でられてダンスの時間が始まった。


「マリーナ、踊ろう!」

「はい!」


 頭にトラ丸を乗せ。足元にはクロ君、頭上にはポ君がいて。ヴォルフ様の足を何度も踏む私を怒らず、笑って魔法をかけてくれた。


 ハァ~ヴォルフ様とのダンス楽しかった。もう一度、ダンスしたいなぁ。舞踏会の余韻に浸る私と「カルロ!」ラゴーネさんはポテチが入っていた、カゴを高く掲げて厨房のカルロを呼んだ。


「はい、なんでしょうか?」


 呼ばれて出てきたカルロに「ポテチ大盛り至急よろしく」とカゴを渡した。それは初日にもあった事で、その時は驚いていたけど。何度も同じことを経験しているから「お待ちください」と、カゴを受け取り帰っていく。


(おかわり……たくさん準備したんだね)


「従順。マリの調理人いいな」


《ラゴーネ、それは許さん!》


「そうよ! カルロを連れて行ったら私もトラ丸も怒るからね! それで、本日はなんのようですか?」


「ん? ゲドウが魔力石を作ってくれって」



「「え?」」



 どこから出したのか、ラゴーネさんが大きな木箱をテラスのテーブルに"ドン"と置いた。私とみんなは驚きで目が丸くなる。


「待て、待て、ラゴーネ! 僕たちは一週間前にも魔力石を大量に作らなかったか? それなのにこの量はなんだ!」


 ヴォルフ様は立ち上がって、木箱を指差した。


「そう怒らない。ゲドウが言うには――『ケガをして人、病気の人を治すため。貧困の人々に食料を渡すために必要なんだ。2人が手を取り合い作ればすぐさ』だとよ。お、ポテチ!」


 ラゴーネさんはテラスから立ち上がり、厨房からカルロが持ってきたカゴを奪うと、空高く飛び上がった。またポテチの強奪ごうだつだ! トラ丸は私の頭の上で毛をたて、クロ君は飛びかかろうとする。

 

 ポ君とシラさんは《ポのポテチ、また?》「また、ですか」あきれていた。



 欲しいなら言えばいいのに、毎回毎回!


「ラゴーネさん、降りてきなさーい! 今日は許しません!」

《ワシも許さん!》


 追いかけようとする、私の手をカルロが捕まえた。


「マリーナお嬢様、落ち着いてください。まだまだ、あります」と伝えた。ポテチがあるならと、トラ丸とクロ君はおとなしくなる。


 私は深呼吸して。


「それで、いつ取りにくるのですか?」

「3日後だ!」


「「はぁ? 3日後!」」


 なんて「鬼! 人でなし!」と、言いたくなるくらいの、人使いが荒い人だよぉ。

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