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みんなに優しげな瞳で見られて、真っ赤になったヴォルフ様と私。
「早く、魔力石をお願いします」と。ここへ来るとき、ヴォルフ様のアイテムボックスに入れてもらった魔力石を取り出してもらい。石を握って魔力を回復させた。
一度、使用すると魔力石は粉々に砕けてしまう。ヴォルフ様とシラさんの魔力も回復した。
「カカナお母様。残りの魔力石は皆さんでお使いください」
「ありがとう、大切に使いますね。ヴォルフ殿下もありがとうございます」
「……いいえ、お気にならさらず」
もう、お母様わかって!
お母様の「仲良くていいわね」と伝えてくる瞳が、恥ずかしくてしかたがないの。早くこの場から立ち去りたくて「お母様、みなさん、私達は帰ります」とヴォルフ様の手を握って、森の出口に向かって走っていった。
《マリ、待て!》
「おい、マリーナ」
《主人、マリーナ?》
《ポ、ポ》
トラ丸とシラさん、クロ君、ポ君が後を追ってくる。森の中をやみくもに走る私に"一度、止まれ"と言う、ヴォルフ様に向けて。
「だって、みんなの優しい瞳が恥ずかしいの! 照れちゃうの!」
ほっぺを"プクッ"と膨らます。
それを見たヴォルフ様は。
「クク、ハハハっ、マリーナは可愛いなぁ」
急に手を引かれて、私の体がふわっと浮いた。
これはヴォルフ様の魔法? だと気付く前にお姫様抱っこをされ、ヴォルフ様は大きくなったクロ君に飛び乗った。
「マリーナ、この方が早いよ!」
「にゃっ? わ、わ、私、トラ丸に乗ります」
「ダメだよ、トラ丸はお疲れだって」
《そうだな、ワシは疲れたな》
「……うう、トラ丸ぅ~」
ヴォルフ様は一気に森を駆け抜けて、森の出口に向かった。出た先に見えてきたのは、騎士団と魔術師達のケガをした人たちを寝かせる天幕だ。
ここにドラゴン――ラゴーネの炎、爪、牙で傷付いた人達がいる。来るときに見た光景を思い出して喉がゴキュッとなり、目を瞑ってしまった。
「マリーナ……目を開けても大丈夫だよ。さっき聖職者が来ただろう? 彼らがケガを治して帰っていったみたいだ」
「え? ケガを治した?」
恐る恐る目を開けると、ヴォルフ様が言った通りだった。ケガ人は1人もおらず、救護班、騎士団達は天幕の回収をしている。
「よかった、みんなのケガが治ったのね」
「ああ、ゲドウさんが率いる聖職者はかなりの力を持つ人達ばかりだね。(ボソッ)気を付けないとマリーナを連れて行かれる」
「ヴォルフ様?」
「うん? 疲れたから、早く帰ってお風呂に入りたいね」
「お風呂に入りたいです! あと、揚げたてのフライドポテトが食べたい!」
その意見にみんなは賛成! 屋敷でお風呂に入った後、カルロに頼むことにした。