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 その男性は巨大なドラゴンに億劫する事なく近付き、矢を掴む私達に話しかけた――それも、どこが楽しそうに。彼はステップを踏むように矢を確認したあと、胸ポケットから細い眼鏡を取り出した。


「なになに? おお――」


(呪いの矢に記された、赤い文字が読めるの?)


 男性は「ふむふむ」「むむむ」ッと赤い文字を確認して、大きなため息をついた。


「ハァ――(子供だましな呪いだな)中々の呪いだね。ドラゴンが呪いにかかったから大事になったのか。君達、ボクが【解呪】したら、一気にその矢を抜いちゃって」


 え? 


「この矢を抜く? こんなに微動だにしない矢をですか?」

《簡単に言うが、抜けるのか?》


「大丈夫だよ~ボクが【解呪】したら、スルッと抜けるから」


(ほんとうに、ほんと?)


 この呪いが簡単に解ける? ――こ、この男性ものすごーく、うさんくさい……私とトラ丸は男性をマジマジ見つめた。


 ドラゴンも思ったのだろう。


「[ダイジョウブカ?]」


 男性に聞いた。


「ハハハ、みんな心配性だな~大丈夫だよ、ドーンとボクに任せて!」


 胸を叩き、カラカラ笑う男性に。


「ゲドウ! わたしの娘と、トラ丸を危ない目に合わせたら覚えときなさいよ!」


 カカナお母様のキツイ声が飛んでくる。

 それすら、男性は楽しそうに。


「わかってるって! でも、カカナは娘の持った能力を信じろよ。かなりのもんを持っているぞ」


「……し、知っているわ」


「それに今回のことで、他の候補者をごぼう抜きで、デリオン殿下の婚約者一番候補だ!」



「「ゲッ(嫌なんですけどぉ~)」」 



《マリがアイツの婚約者だと! 断固拒否!》


「デリオン王子の婚約者だと! 断固拒否だ!」


《ウンウン、拒否、拒否!》

《ポも拒否!》


 ヴォルフ様達にも話が聞こえたらしい。

 みんなは知ってるもんね。どれだけ、私がデリオン殿下に嫌われていて、ひどいことを言われたのかを……更にデリオン殿下はヴォルフ様にまで、ひどいことを言ったからーーいまは嫌い。


《マリはやらん!》

《あげない》

《ポも同じ!》


「……あらら、デリオン殿下はそうとう嫌われてるねぇ。あの態度だからか? まあ上の決定は中々断ることが難しいけど頑張ってね。ーーさぁ、場も和んだことし。はじめようか」


 カカナお母様に。ゲドウと呼ばれた男性は空間に手を突っ込むと、先端に十字架付きの銀色の杖を取り出した。



「待て、その杖は? この男は聖職者か⁉︎」



 ヴォルフ様の驚く声が聞こえた――この人が聖職者? だとしたら、神聖魔法を操る神職に就いた者とヴォルフ様に習った。


 この人が?


「フフ、何処をどう見てもステキな聖職者でしょ? まぁ弟子達のように堅っ苦しい聖職服は着ていないけど、ボクは強いから任せて!」


(じ、自分で言った?)

《マリ。アヤツ、中々の強者つわものだぞ!》



「そうだった。弟子達~聖水の準備をよろしく~」

「かしこまりました、ゲドウ様」

 

「よろしい!」


 聖職者のゲドウは、十字架付きの銀色の杖を振りかざして「【解呪】」の神聖魔法を唱えた。

 

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