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ドス黒い――あの矢が呪いの矢⁉︎
あの矢を引っこ抜けばドラゴンの呪いが解ける?
いやぁ、そんな簡単に呪いって解けるもの?
(それに、赤く光る文字の様なものまで見えるのだけどぉ)
ドラゴンの大きさ、距離で赤く光っているのはわかるけど、ここからだと読めない。ん――引っこ抜いちゃえばわかるかな? ドラゴンも苦しそうだし、このままらだと埒が明かない(物事が進展しない)よね。
ここはあの矢が見える私がトラ丸に乗り、ドラゴンに突っ込んで抜くしかない。
すなおに言えば、怖い。
トラ丸も付いてきてくれるのか、わからない。
だけど、森の外の天幕にはドラゴンと戦い、ケガ人が多く出ている。これ以上、ケガ人を出したくない。それに、わかってるよ。、ドラゴンの力が強力な事も。
それよりもカカナお母様が魔術師達を集めて、何かをやろうとしている。側にいる、ヴォルフ様とクロ君、シラさんとポ君も。
よし抜こう!
抜くしかない!
(私はお母様を失いたくない。前世の分までお母様に甘え倒したいし、ジロウともっと遊びたい! ヴォルフ様達だってケガしてほしくない!)
手を力強く握り、気合を入れる姿に。
頭の上のトラ丸は大きなため息をついた。
《ふうっ……マリにも、アレが見えているのだな――そして、アレを抜きたいのだな》
「「トラ丸、わかってるねぇ。そう、私はアレを抜きたい……いや抜く!」」
《……まだ防御魔法は効いているな。仕方がないな……ワシが猛スピードでドラゴンに突っ込んでやる、振り落とされるなよ》
「「いいの? だったら、噛み付いてでも離れないわ!」」
《いや、それはちょっと》
「何よ、トラ丸! それくらい、しっかり、ガッチリ、しがみ付くって言う意味!」
私は『怖い』と口に出さないよう唇をギュッとむすび、大きくなったトラ丸に飛び乗った。
「早く帰って、カルロが作ったポテチが食べたいなぁ」
《ポテチか、いいな。ワシはフライドポテト、蒸かし芋、ジャガイモのガレット……言い出したら止まらんな》
「フフ、わかるぅ。――じゃ行こう、トラ丸!」
《おう、マリ》
その行動への反応に誰もが遅れた。少し遅れてカカナお母様は私とトラ丸へと手を伸ばした。ヴォルフ様とクロ君、シラさんとポ君は私の名前を叫び。止められないとわかると、魔法で防御魔法を強化した。
「「ダメ! マリーナ戻ってきなさい!」」
私達を呼びとめる、カカナお母様の必死の声。だけど、走り出した私達を誰も止められない!
「いっけぇ! トラ丸」
《ガッテン承知!》
突撃する私たちに。
「[オオ――ムスメ、ナニヲスルキダ?]」
ドラゴンが身構える。
そうだよね。
お母様、魔術師と騎士団達はドラゴンからある一定の距離を置いていた。あまりにも近付きすぎるとドラゴンの"攻撃可能な範囲"に入るから。ギリギリ防げる範囲で戦っていた。
それを私はトラ丸と飛び越え進んだ。
ドラゴンは己の"攻撃可能な範囲"にはいられ、自分の身に何が起こるのかと息を呑む。いまこの場で呪いが発動して、ドラゴンの自由が効かなくなったら? と誰もが脳裏に浮かんだだろう。
でも私とトラ丸は進み、ドラゴンの脇腹に刺さる黒い矢まで来た。遠くで見ていた時はわからなかったが、近くで見るとかなり太い矢だ……でも、ここまで来たんだ。トラ丸は口で、私は両手でガッチリ掴んだ。
《うりゃあ――――!!》
「うりゃあ、抜けろぉ――――!!!」




