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お母様は鑑定魔法が終了後――魔術師達を集めて話している。どうやらお母様たちの鑑定魔法でも、ドラゴンに呪いがかかっていると鑑定がでたみたい。
しかし。
みんなは集まり話をしながら、渋い表情を浮かべている。それは呪いというモノはそうやすやす解術できないらしい。ヴォルフ様もその事を知っているらしく、魔術師たちの話を聞きながら、シラと話している。
(なになに? 呪いを受けた場所が分かればいい?)
その場所を見分けるのが難しいらしく、みんなは頭を悩ましている。だが悠長にしていられない。ドラゴンとの戦いでケガ人を多くだしている、騎士団達の体力に限界がきている。
「に、苦手ですが……呪いに詳しい、あの方に連絡を入れます」
「カカナ様? ……そうですね、そうして方がいい」
「後で、あの方のグチグチ、ネチネチな愚痴は代わりに僕が聞きます」
そうとう苦手らしく、渋い表情のままのカカナお母様は連絡用の水晶を、胸元から取り出した。
その連絡をするとき。
「[クソ、クソ、コノオレサマガ――コンナコトニ、ナルトハナァーー!]」
(え? ドラゴンにも限界がきた?)
「[チクチク、チクチクトウザイ! ジャマダ、ニンゲン!]」
グワァーーっと。ドラゴンは大きな口を開き、外部と連絡するお母様に向けて吐き出す。
(危ない! カカナお母様!)
「ヴォルフ様、トラ丸をお願いします」
「え?」
頭からトラ丸を下ろして、私はお母様の前に走り「「ウィンド・シールド」」と風魔法を叫んだ。私とドラゴンの間に緑色の風のシールドが現れて、ドラゴンが吐いた炎を防ぐ。
「[ナニ!]」
(ヴぐっ! ヴォルフ様と行った魔法訓練のときの、魔法の炎とは桁違いの熱量だわ。気を抜いたら、一気に風のシールドは消えて大やけどをおう)
「ウググッ! 「ウィンド・シールド」」
再度、風魔法を叫びシールドを強化した。
《マリ⁉︎》
「マリーナ⁉︎」
「[オオ! チイサキニンゲンガ……ホノオヲフセイダ? ニンゲンノナカニモ、ナカナカノマリョクヲ――モツモノガイルノダナ]」
「「マリーナ? あなた何をしているの!」」
《マリーナ、逃げろ!》
突然前に現れ風魔法を使った私に、お母様とジロウの驚く声が聞こえた――が。この場を退けば、ドラゴンが吐く炎はお母様と駆け寄ってきたジロウを襲う。
「嫌です! カカナお母様、ジロウ、私はここを退きません!」
お母様とジロウを守るんだ! 風のシールドで炎を抑えている私に。
「[オヌシ、チイサイノニ、ナカナカ――ヤルナ]」
「ほ、褒めてくれるの? 嬉しい、ドラゴンさん!」
(ヤバッ、つい嬉しくて反応しちゃった)
返事が返ってこないと思っていたドラゴンに、言葉を返したからか。ドラゴンの瞳が大きく開き、口から炎は消えた。
「[オイ、オヌシ! ワレノコトバガ、ワカルノカ?]」
みんなには『ガウウウ?』と聞こえたドラゴンの声に。
「はい、まるッと聞こえています」
親指を立てた。
「[エエ――――⁉︎]」
「「ええ――――⁉︎」」
《ほんとうですかぁ!》
《……マリ》
〈大胆だな〉
《マリーナ、面白い!》
「彼女の行動は想像を超えますね」
《ポも、驚いた!》
驚愕のドラゴンと騎士団、魔術師、カカナお母様とジロウの驚く声と。ヴォルフ様達のあきれた声に『あれ私? 何かやっちゃいました?』異世界に転生した人が必ず……じゃないけど。無自覚でチートを使ったあとに言う――言葉が頭に浮かんだ。