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クロ君にヴォルフ様とシラさんが乗り、私はトラ丸に乗り、一緒に乗ったポ君の防御魔法で守られている。私達は姿を消して森の中を進み、騎士団とお母様がいる魔術師達のところへと向かっていた。
「ドラゴンブレスだ、避けろ!」
「炎だ、うわぁーー!!」
「行くぞ、防御魔法だ!」
「[ゴメン、ゴメンナサイ]」
そのあいだもドラゴンの「タタカワナイ」苦しむ声と、騎士団と魔術師達の怒涛の声が飛び交っていた。その離れた場所では天幕がいくつも張られ、救護班が慌ただしくケガ人を回復魔法で治している姿が見えた。
(前線で戦う、騎士団と魔術師達は命を賭けてこの国を守っている――カカナお母様も最前線でジロウと戦っているわ)
ゲームのマリーナのままだったら、絶対に見られなかった場面だ。
「マリーナ! 何が起こるか分からないんだ、よそ見をするな!」
「え? は、はい!」
《マリ、気を引き締めろ!》
カカナお母様とドラゴンが気になって目で追ってしまう。それは危険なこと――今、私達は森の中にいるが近くには"呪われたドラゴン"がいる。それに気を取られた私が。とら丸から手を離して、ドラゴンの近くに転げ落ちてしまったら……助けられないし、みんなを危険に巻き込む。
"しっかりしろ!"と、トラ丸にも喝を入れられた。
「ごめんなさい、気を付ける」
《わかったら、しっかり掴まれ!》
あと少しで騎士団と魔術師達のところにつく。ヴォルフ様は少し前で止まり「姿を現そう」と指示を出した。私は身消しの魔法をとき姿を現す。
魔術師達は別の魔法を感知したのか、こちらを向いた。そして、聖獣に乗ったヴォルフ様とシラさん私の姿に驚く。
「き、君達! 何故ここにいる?」
「王都への避難指示は、行き渡っていないのか?」
「戦闘中にどうした? はぁ? こんな危険な場所に子供?」
騎士団達も驚くのも仕方ない。私達はめずらしい聖獣に乗ってはいるが、ここはドラゴンがいる前線。その場所に11歳と10歳の子供が来たのだ。
「ロベルト国の騎士団、魔術師の方達、この様な場所へ来てしまい、すみません――ですが、ボクの話を聞いてください!」
ヴォルフ様がクロ君から降りて頭を下げた。騎士団の中にいたガタイが良く、ゴツい鎧を身に付けたヒゲの男が1人前に出てきた。
「私達に話ですか?」
「はい」
ヴォルフ様が"呪い"の事を伝えようとしたとき。いったんドラゴンから退却してきた、カカナお母様がジロウと降りてきて憑依をとき、ジロウの頭を撫でた。そして、騎士団と一緒にいる、私とヴォルフ様の姿を見て目を見開く。
「え? ヴォルフ殿下!? マリーナ!? あなた達、何故ここにいるの?」
《ええ!? こんな危険な場所に来たんですか!》