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《ドラゴンの声?》
「僕にはドラゴンの鳴き声しか聞こえない」
《主人とおんなじ》
みんなが驚く。そうだろう、私もなぜ聞こえてくるのかわからないけど、苦しむドラゴンの声が聞こえた。
「あのドラゴンは『戦いたくない』『自分の体が勝手に動く』と嘆いている。でも、その原因がわからないの」
「なに、体が勝手に動く? あのドラゴンは何者かに操られているというのか? あれほどのドラゴンを操る?」
ヴォルフ様は目の前で火を吹き、爪を振り上げるドラゴンを見上げ呟いた。巨大で狂暴のドラゴン――それを操る人物がいる。
それは驚異のほかない。
「[ヒトビトガ――オレノハク、ホノオデ……ケガヲシテイル……カナシイ、イヤダ、ダレカ――オレヲトメテクレ!!]」
「ドラゴンが自分を止めてくれと泣いているわ。私は止めてあげたい。でも、どうしていいのかわからない」
《歯痒くても焦るな、マリ》
頭のトラ丸に「わかっている」と頷く。
「ドラゴンを『鑑定』するか? それをするには魔力が少したらないかな? シラ、戻ってきてくれ」
ヴォルフ様はドラゴンを水晶に撮ることをやめて、空で撮影していたシラを呼び戻し、ご自身にクロ君を憑依させた。ヴォルフ様の頭とお尻に、クロ君のモフモフな耳と長い尻尾生える。
(この場でこんなことを思うのは不謹慎だけど、ヴォルフ様――可愛い)
「シラ、ポ、お前達の魔力を貸してくれ」
「かしこまりました」
《ポの魔力は、いい魔力!》
「ありがとう、助かるよ」
シラさんとポ君の体から発せられた光る魔力がヴォルフ様にわたる。その魔力を受け取りヴォルフ様は"鑑定スキル"を唱えた。
「「【鑑定】」」
巨大なドラゴンの隅々まで鑑定をする為には、膨大な魔力がかなり必要なのだろう。魔力の受け渡しがまだできない私は。ヴォルフ様、クロ君、シラさん、ポ君を、ただ見ていることしか出来ない。
(訓練して、いつか出来るようなりたい)
「[ハンゲキシテシマウ、ニンゲン、ヤメロ、ヤメロ!!]」
私にだけ……聞こえるドラゴンの悲痛な叫び。
目の前で命令が飛び交い、繰り広げられるカカナお母様、騎士団魔術師たちの戦い。ヴォルフ様は隣でドラゴンを鑑定していた。――そのヴォルフ様は何かを見たのか唸った。
「うっ……な、何? あ、あのドラゴンは呪われている」
ドラゴンの鑑定途中、ヴォルフ様がつぶやいた言葉に驚くしなかった。




