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「コレがドラゴンか」
大回りをして森を抜けた先に見えたドラゴンに、ヴォルフ様が息を呑む。
私達の目に炎をまとったドラゴンが遠目に見えた。その大きさは3階建てアパートくらい? に見えた。
(ひょぇ……牙、爪の鋭さ、何もかも桁違いに大きい)
「クッ、ドラゴンの鳴き声、見た目――ホンモノは違うな。映像に残そう」
《ウンウン、残そう。ほぇ図鑑だと、大きさがわかんなかったけど、スゴいね》
ポを憑依して空を飛ぶ、シラにも伝えた。
ヴォルフ様は胸元から手のひらサイズの水晶を取り出して、ドラゴンの映像を取りはじめる。撮った映像は国の研究者に送ると言った。
魔法大国クエルノ国だもの研究者達も多く、いろんな魔物の研究もしているのだろう。ヴォルフ様の隣でドラゴンを見上げた――その近くに光る耳と尻尾を生やした、カカナお母様がドラゴンと戦っている。
「お母様、ジロウ……」
「シラの憑依と同じで、ジロウの力を借りて戦っているね」
隣にいるヴォルフ様も見上げた。
〈ギャオオオオオオォオォンンンンン――!!〉
お母様の氷魔法の攻撃に、苦痛の鳴き声をあげるドラゴン。強いお母様……でも、でも。考えたくないけどゲームだとこの時、カカナお母様は亡くなってしまう。
――お母様。
ドラゴンの繰り出す炎、爪、牙の攻撃を避けながら戦うお母様を見つめた。ドラゴンがカカナお母様の氷魔法をくらい、鳴き声をあげた。
「[ヤメロ! イタイ、コウゲキスルナ……オレハ、タタカウキハナイ、タタカイタクナイ。ナゼダ? オレノ、カラダガ、カッテニ……ウゴク]」
(え? やめろ? 戦いたくない?)
「[オレハ――ニンゲントハ、タタカワナイ……]」
また、聞こえた。
コレ、もしかしてドラゴンの声なの?
「[カラダガ、アツイ……ヤメロ、ヤメロ、ヤメテクレ、オレガ……オレジャナクナル!!]」
悲しくて、苦しげな声に胸が締め付けられる。
その声を聞こたくなくて、私は耳を塞いだ。
《どうしたマリ?》
「わからない……苦しむ、ドラゴンの声が聞こえるの?」




