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けたたましい鳴き声と熱風に空を見上げた。
「な、な、なに? この鳴き声と熱風?」
《足元が揺れたぞ?》
「マリーナ、トラ丸、コレはドラゴンの雄叫びだ!」
《雄叫び? 主人、ボク怖いかも》
ヒェ、マジですかぁ――やはりテレビ画面のドラゴンとは違う、本物の迫力にゴクリと喉が鳴った。トラ丸とクロ君も今の鳴き声と熱風、足元の揺れに震え上がる。
(初めての体験だもの、怖いよね)
ヴォルフ様も同じみたいで、険しい表情を浮かべて。
「クゥッ、初めて見る(図鑑じゃない)ドラゴンに、ドキドキと恐怖が感情に混ざるな」
私達を落ち着かせようとしているのだろう、顔は笑っているが、彼の手は震えていた。
(私と同じ……)
「ええ、見てみたいと思う気持ちもあり、怖いと思う気持ちもあります」
「そうだな」
ゆっくり森の中を移動中、空から監視していたシラさんが私達の元に降りてきて、ヴォルフ様と私に報告した。
「森を抜けてすぐに――鱗が赤く燃えあがるドラゴンの姿を見ました。今、騎士団と魔術師達が魔法と剣でそのドラゴンと対峙中、怪我人が複数見えました」
――火龍か? ヴォルフ様の声が聞こえた。
「シラ、ありがとう。騎士団、魔術師が水晶で話していた通り、かなり狂暴なドラゴンの様だな……ボクたちは遠くからドラゴン、騎士団、魔術師達を確認しながら、邪魔にならないよう徐々に近付こう」
《主人の意見に賛成! その方がいいよ》
《ワシもそれがいいと思う》
クロ君は耳を動かし音を聞き、頷いた。トラ丸も何かの音を聞いたのだろう、一度小さくなり私の頭に引っ付いている。
「もう一度、空から見て指示をいたします」
「シラ、ポ、無理は禁物だからね」
森を抜けてすぐ側にいるドラゴン。そのドラゴンは怒り狂い、けたたましい雄叫びをあげ、騎士達が指示を出し魔術師達は魔法を使っている。
(とても近付けられない、ピリピリした雰囲気だわ)
今まさに、ドラゴンと対峙している騎士団と魔術師たちが進む道とは、別のルートを進んていた。だが、私達もドラゴンの側まで来たのだろうか? 周りの気温があがり熱く感じる。
「ふうっ、ドラゴンが近くにいるからか熱くなってきてね。水魔法のウォーター・メイル(水の鎧)で防御をさらに上げて体の体温を下げよう」
鎧を身につけたヴォルフ様が額の汗を拭い、水魔法を使った。