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「じゃ。トラ丸、大きくなってみて」
《わかった》
ヴォルフ様の合図で、トラ丸が元の大きさより10倍近くの大きさになった。私の前で乗る為に大きくなったトラ丸はモフモフ、モコモコが100倍! 私は辛抱できず、すかさず大きなトラ丸に抱き付いた。
モフン、体がトラ丸の胴体に埋まる。
「きゃぁ――! トラ丸、かわいい! モフモフ、モチモチ、癒される!」
《お、おい、マリ? そんなに強く、ワシに抱きつくな!》
そんなこと言ったって。
「いやぁ~ごめんトラ丸、我慢できない! モフモフ、モコモコのトラ丸、至福」
《おい、マリ。あまりワシにくっ付くと、ワシはお前と空を飛ばない》
え? それはマズイ。トラ丸のその言葉を聞いた私は、残念だけどスッと胴体から手を離した。私の体の形が残った、トラ丸はプルプル体を動かし後を消した。
「ハハハッ、マリーナのその気持ちわかるよ。ボクもクロが大きくなったときに、思いっきり抱き付いたから」
《ウンウン。主人、キュッとしてくれた》
「そう、でしょう! 小さくてもあんなに可愛いのに、大きくなったんだよ。トラ丸に抱き付いちゃうよ!」
興奮しすぎて、ヴォルフ殿下に普通に喋ってしまっていた。
直ぐにマズイと気付いた――お父様とお母様に知れたら怒られる。しかしヴォルフ様が楽しそうなので、怒られてもいいかと私も笑った。
「フッ」
《主人、面白いね。ポも面白い》
シラさんまで? まっいいっか笑われてもいい、モフモフのトラ丸に触れたから。
「さあ、マリーナ。トラ丸に乗って空を飛んでみよう」
「はい! トラ丸、よろしく! トラ丸の背中に乗るね」
《ああ。キツく、モフらなければ乗っていい》
「やった! おじゃまします」
乗る為にしゃがんでくれた、大きなトラ丸の背中に、スカートだから背中の上に横乗りで乗った。