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「プッ、ハハハッ! タネを植えるのはまたにしよう。今から聖獣についての話をしたい、いいかな?」
聖獣の話?
これは大切な事。
「はい、タネはまた今度にします」
「よろしい、聖獣の背に乗って飛んだことはある?」
「あります。お母様のジロウの背に乗せてもらったことがありますが、トラ丸に乗ったことはありません」
「ジロウ? ああ、カカナさんのジロウか。あの子は賢くて主人に恵まれている。それにロベルト国にはジロウしか聖獣はいないから」
ヒェー! この国には聖獣ジロウしかいない?
そうなると。聖獣が見えるイコール魔力の高い者がいないことになる。と言っていたから、お母様がこの国最強の魔導師!
カカナお母様すごい!
「あ、でも。ヴォルフ様は聖獣の卵をデリオン殿下の誕生会で、プレゼントしようとしてませんでしたか?」
「それは――あいつが何度も何度も「聖獣の卵をクレ」って手紙をよこすから、父上と兄上と話してデリオンにプレゼントする事にしたんだ。聖獣の卵を孵化させることが出来るかは置いといてね」
その聖獣の卵が"キライな私"のところに来て、さぞかしご立腹なんだろうなぁ。でも前のお茶会の席でトラ丸のことが見えていなかったし、デリオン殿下では無理だったはず。
――ニシシ、トラ丸は私のだもん。
「ボクとしては、デリオンよりマリーナに聖獣の卵が渡って、よかったって思ってる。トラ丸を大切にしているし、マリーナとは兄妹みたいたがらね」
《フン、マリは私の妹だからな》
「ねえ、トラ丸お兄ちゃん。だから背中に乗せて欲しいな」
《イヤだね》
「即答! お願い乗せてよ、トラ丸と空を飛んでみたい」
これは本当の気持ち。
トラ丸と一緒に空を飛びたい。
「お願いします!」
《そんなに言うのなら。乗せてやらんこともないぞ。オヤツはポテトチップスな!》
「わかりました。オヤツにポテトチップスを作ります!」
「なに? ポテトチップス? それも美味しそうだ」
《新しい食べ物だね》
《知らないか。薄く切ったジャガイモを油で揚げて、塩を軽く振る。パリパリの食感はたまらんし。アボカド、ゆで卵、マヨネーズを混ぜた物をディップしても美味い》
「美味しそう、楽しみだね」
《うん、楽しみ》
大きくなった、トラ丸の背中に乗せてもらう事になった。