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昼食時間まで、ヴォルフ様の講義がテラスで始まった。彼は持ってきた小さなカバンからあきらかに容量オーバーの大量の書物、手書きのノートを取り出しテーブルに置いた。


 ま、まさかそれは!


「ヴォルフ様のそのバッグ! なんでも収納ができるマジックバッグですか?」


「よく知っているね、そうだよ」


(すごい! みためは可愛い革製の小さなカバン。でも、アレがマジックバッグ? あのバッグの中に手を入れたら、どうなるのかしら?)


 マジックバッグを見て、ウキウキワクワクの私よりも頭の上のトラ丸がくいつき。クリームパンの様な前足で、ヴォルフ様のカバンをチョイチョイ突っつく。


《摩訶不思議だ! そんな小さなカバンから大量の書物が出てくるとは……なんでも、入れたい放題じゃないか》


《でしょう。主人のカバンおもしろいよね》

《ポの主人も持ってる》


 ヴォルフ様の側近のシラさんも? と彼を見た。彼はトラ丸とわたしの視線に気付き、執事服の前を開けて、さりげなく腰に付けている小さいカバンを見せてくれた。


「あれも、マジックバッグですか?」

「そうだよ。バッグに空間魔法がかけられているんだ」

「空間魔法?」 

「そう、バッグの中は時間が止まっていて、食べ物を入れても腐らないんだ」


「ええ⁉︎ バッグの中に入れた食べ物が腐らない?」

《マリ、この世界はすごいなぁ》


「うん、うん。すごいね」


 トラ丸が驚くのもわかる。マジックバッグ――小さなバッグに沢山のものをしまえて、食べ物が傷まないなんてありえない。


「フフ、驚いた? このマジックバッグを持つ者は、僕達の国でもごく僅かなんだ」


「ごくわずか……貴重なものなんですね」


「そうだよ。それに魔法も貴重。魔法一つで火をつけたり、灯りをともしたり、水を出したり出来る。だけど使い方を間違えると、人を傷付ける危険なものに変わってしまう」


 それじゃ。と、ヴォルフ様はマジックバッグから、手のひらサイズの水晶玉を取り出して「この水晶に手をかざして、いまからマリーナの魔法属性を調べるから」と言った。


 言われたとおり手をかざすと水晶玉の中で渦巻きが起こり、それが消えると、今度は緑の葉が水晶玉を覆った。ヴォルフ様が水晶を見て頷く。


「へぇ、マリーナの属性は風と植物魔法か。2つの属性を持つのは珍しいね。ちなみに僕は水属性と氷属性で、シラは火属性ね」


「ヴォルフ様が水属性と氷属性。シラさんが火属性」


「そうだよ」


(ヴォルフ様の属性はゲームと同じだけど、私が風属性の他にもう一つの属性を持っているなんて、設定になかったはず)


 それに、この植物魔法って初めて聞く。


「ヴォルフ様、風属性はわかるのですが。植物魔法ってどの様な魔法が使えるのですか?」


 ヴォルフ様はテーブルに置かれた書物から、一冊を手に取って開いた。


「えっと、植物魔法は植物をイキイキと育てられたり、枯れた土地の土を生き返せるって、書いてあるよ」


 なんですって!


「植物をイキイキ育てられる! だとしたら、ジャガイモをたくさん実らせることができるってこと?」


 魔法で、ジャガイモを実らして食べ放題!

 こんな嬉しいことはない。


《いや、マリ。ジャガイモに限った事ではないぞ、いろんな植物が実らせられる》


「え? そうか。いろんな野菜のタネを手に入れて植えたいね」


《おお、いいな!》

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