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ジャガイモが苦手だと言っていた、ヴォルフ様はコロッケを気に入ってくれたし。この調理法は面白いと、魔法大国にも広めようと側近のシラと話していた。
(フフ、ポテチとフライドポテトも知ったら、腰を抜かしちゃうんじゃない?)
他にも芋もちは腹持ちもいいし、じゃがバター、蒸して食べても美味しい。あとはガレット、グラタンに入れてもいい。
(たくさん食べてもらおう!)
翌日から魔法の授業は始まった。というより、日課のランニング途中にヴォルフ様と従者のシラさんはやって来て、いま一緒に屋敷の周りを走っている。
トラ丸は頭の上からクロ君とポ君のところへ行き、戯れてはじめた。
(もふもふ、モフモフ~眼福、眼福)
「マリーナ、もっと腕を動かして!」
「は、はい!」
「お2人とも、まだまだです」
「「え!」」
颯爽と走っていくシラさんとヴォルフ様と、へとへとの私。なぜ? かれこれ1ヶ月以上は走っているのに? 徐々に走れるようになったと思っていたのに……シラさんとヴォルフ様は笑顔で走っている。
(基礎体力の違い?)
ゼェ、ゼェ……
「お、終わった! 屋敷の周り3周!」
「ふうっ、さすがに息が切れるね……でも、汗をかくのは気持ちいい!」
「……そうですね」
「ヴォルフ様、マリーナ様、よくがんばりました!」
走り終わり厨房近くで、休憩している私たちの所にカルロが厨房から「お疲れ様です」と出てきて、搾りたてのオレンジジュースをコップ一杯くれる。これがほんとうに美味しくて、最近はこれを飲むために走っているのかも。
「ヴォルフ様、シラさん、オレンジジュースをどうぞ」
「ありがとう! ん? 美味しい」
「ありがとうございます。おお、これは美味しい!」
「ねぇ、搾りたてだから最高! ヴォルフ様、朝食は食べました? まだでしたら一緒に食べましょう!」
「いいのか?」
「ええ、お父様とお母様も喜びます! シラさんとポ君も一緒に食べましょう!」
ヴォルフ様と一緒に走ってくれた、側近のシラさんとポ君も誘う。
ポ君は翼を広げて
《ポ、嬉しい!》
《今日はポテトサンドだ! 美味いぞ!》
《ポテトサンド? はじめて》
《ポも初めて!》
ランニングの汗をお風呂で流して、食堂に向かった。
食堂ではお父様とお母様が先に食事をとっていた。ジロウは大人しくお母様の横に座っている。
「マリーナ、おはよう」
「おはよう、今日も元気で何よりですわ」
「おはようございます、お父様、お母様」
「おはようございます。朝食の最中にすみません」
「おはようございます。失礼致します」
私の後に入ってきたヴォルフ様に、お父様とお母様は食事の手を止めて頭を下げた。
「これはヴォルフ様、おはようございます。何もありませんが。お好きな席で朝食を召し上がってください」
「ヴォルフ様、どうぞお座りください。お付きの方もどうぞ」
「ありがとう」
「失礼します」
《ジロウ、おはよう》
《おはよう、マリーナ。クロとポが増えて賑やかだな》
《ねぇ、賑やかだね》
もふもふが増えて幸せ~
《マリ! メシ、メシ!》
《待って、いまあげるから》
ひときわ賑やかな、トラ丸が頭の上で騒ぎはじめた。




