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まずは自己紹介から始めようかな? ヴォルフ様はそう言って笑った。そうだ彼の事は、魔法大国の王子と名前しか知らない。
「僕の名前はヴォルフ・クエルノ11歳。好きなものは魔法とクロ、マリーナ嬢も面白いから気に入っているよ。好きな食べ物は果物。苦手な物はジャガイモかな」
「え? ヴォルフ様はジャガイモがお嫌い!」
「うん、蒸してもポソポソしてるし、スープはドロドロして少し苦手なんだ」
蒸す料理とスープ?
ポテチは? フライドポテトは? いいえ、蒸したジャガイモも、ドロドロスープ美味しいはず。
「好き嫌いはダメです。魔法と聖獣のことは全てヴォルフ様に習うとして、ウチの領地の特級品のジャガイモを好きにさせますわ! おっと、私はマリーナ・カッツェ10歳です。聖獣はトラ丸と言います」
「ジャガイモが特産品か――珍しい料理が食べられそうだね」
「フフ、ヴォルフ様のお口に合うといいのですが、珍しい料理をたくさん教えますし、食べてもらいます」
《マリ、だったらポテチか? フライドポテトか? ワシはコロッケが好きだな》
「私もコロッケ好きだよ、揚げたてはホクホク、衣はサクサクして最高! お昼、カルロに頼んでジャガイモのコロッケを揚げてもらいましょう!」
ヴォルフ様に「待っていてください!」の応接間から出ていく。
「あ、マリーナ?」
《ハハ、楽しそうに行っちゃったね》
「そうだね。僕が魔法の先生でも喜んでもらえて、嬉しい」
《よかったね、主人》
廊下を走り、厨房で作業をするカルロを呼んだ。
「カルロ、カルロ!」
「マリーナお嬢様どうされました? お茶とお茶菓子がなくなりましたか?」
「うん、それも用意してほしいけど。お昼にコロッケを作って欲しいの!」
「コロッケですか? それなら丁度準備中です」
「ほんと! ヴォルフ様に食べてもらいたい!」
「揚げたてをご用意いたしますので、お客様をお一人でお待たせしてはなりませんよ」
「わかってる!」
カルロに新しいお茶とお茶菓子をもらい、応接間に戻った。
「ヴォルフ様、ヴォルフ様! お昼に揚げたてのコロッケが食べられます!」
《揚げたては美味いぞ!》
応接間を開けたすぐ、トラ丸と一緒に伝えた。彼は私の淑女らしからぬ行動を見ても微笑み。
「ありがとう、楽しみにするよ。それで魔法の勉強は2日後からはじめるから――あと、ロベルトの国王陛下に王城の書庫に入る許可も貰っているから、一緒に王都へ行こう」
王城の書庫?
「ええ! 楽しみです! ヴォルフ様、ありがとう」
「フフ。まあ……デリオン王子には会うと思う。彼が何を言ってきても僕は気にしないから、マリーナ嬢も気にしなくていいからね」
「気にしません!」
ヴォルフ様とお茶のお代わりを用意して、たくさん話をした。彼は私のお父様に頼み、我が家近くの別荘を買いリフォームしたと言っていた。