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《ねぇトラ丸、魔力石を作るのって難しいね》
《なら、コツを掴めばいいんじゃないか?》
《コツかぁ、それがまた難しいのよね》
《諦めるな、やり続けろ!》
朝の支度と朝食を終えて、私とトラ丸はお母様に貰った木箱をのぞいていた。中には魔石(魔力石)になる透明な石がたくさん入っている。貰ったあと何個か挑戦してみたのだけど、美味くいかず何個か石を砕いてしまった。
《わかってる。お母様もはじめは難しいと言っていたわ、挑戦あるのみ》
《そうだな。ところでマリ、おめかしして今日は何かあるのか?》
《うん、今日は魔法の先生が来るの》
《魔法の先生?》
《そうそう》
トラ丸と話していると、コンコンコンと扉が叩かれた。
「マリーナお嬢様、魔法の家庭教師がいらっしゃいました。いま応接間にて、お嬢様をお待ちしております」
街に待っていた魔法の先生が来た。
「わかったわ、トラ丸行きましょう!」
《おう!》
いつものとおりトラ丸を頭に乗せて、応接間に向かった。
応接間の前で足を止めて深呼吸した。今朝、朝食の時、お母様の話ではステキな先生だと話して。お父様は粗相のないようにしなさいと言っていた。
(優しくて、ステキな先生だといいなぁ)
緊張しながらコンコンコン扉を叩き、扉を開けスカートを掴み頭を下げた。
「ごきげんよう、本日からよろしくお願いします」
「よろしく、マリーナ嬢」
中から聞き覚えのある声に顔をあげた。
え?
「ええ? ヴォルフ殿下? 魔法の先生って殿下だったのですか?」
隣国、魔法大国の王子が私の先生? 彼の後ろにはお茶会であった側近のシラさんと肩にポ君もいた。焦る私にトラ丸は頭の上から呑気に声をかける。
《別に、いいんじゃないか?》
「そうだけど、お忙しいのではないのですか?」
「やる事はしっかりやってきたし、平気だよ。ちゃんと父上と母上にも許可も取ったし、魔法の先生としても教えられる実力もある。2人とも喜んで送ってくれたんだ……僕じゃ役者不足かな?」
私はブンブン首を横に振った。
嬉しいに決まってる。
「お会いできて嬉しいです、ヴォルフ殿下、クロ君」
「僕もマリーナ嬢と、トラ丸に会えて嬉しい」
《ボクも会いたかった》
《ワシは――嬉しいかな》
同じ歳で隣国の王子が私の魔法の先生。お父様とお母様は私が聖獣を持ったから許してくれたのかな? 他の先生は少し怖かったから――嬉しい。
「マリーナ嬢まずはじめに、僕を呼ぶとき殿下はやめてね」
「はい、ヴォルフ先生」
「クッ」
《ポッ!》
《プッ!》
え? シラさん、ポ君、クロ君が笑った。
「……先生もいいけど、そうじゃない」
「そうじゃない? でしたら……ヴォ、ヴォルフ様」
「うん、正解! これからそう呼んでね、マリーナ」
「⁉︎」
笑った顔が可愛くてドキドキした。前世と、今世をたせば私の方が年上になるのに……男性に対する免疫がなさすぎて、頬を赤くするしかなかった。