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私が思うのは――父親だけになった、マリーナは誰からも相手されなくなった。その中でデリオン殿下だけは、文句を言いながらもマリーナに話しかけた。
宰相の娘で、公爵の地位もあり殿下の婚約者になれたマリーナの執着はますます、彼に執着したんじゃないかなぁ。ゲームの中の話じゃ。
――私はデリオン殿下はないかな。
(初めから嫌われているのだから、どんなに努力してもひっくり返らない……そんなことは痛いほど体験してる)
無理なんだよ。
「マリーナ嬢……」
「ヴォルフ殿下、気にしなくていいよ。むしろもっと殿下とは話したいかな……贅沢な願いかもしれないけど」
ヴォルフ殿下に何があったのかはわからないけど、私にも引きこもりした時期もある――まあ同情はしないけど、彼とはもっと話して仲良くなりたい。
《主~元気出して、ボクがずっといるから》
クロが側でずっと心配してる。ヴォルフ殿下もクロと話せればいいのに、そうしたら毎日が楽しくなるかも。
「デリオン殿下、すみませんでした(覚えていないけど)心配されなくても私からは近寄らないわ。ヴォルフ殿下、クロ、トラ丸行こう」
奥にも休める場所がある、私は彼に手を差し伸べた。
「ありがとう。デリオン殿下、僕達は失礼する」
「……フン、好きにしろ!」
手を繋ぎ庭園の奥に向かった。私達がついた場所は東屋と言われる庭園の中にある休憩場所だ。なぜ知っているかって? それはここでヒロインと、デリオン殿下が仲良くお昼寝するシーンがあるから。
「ヴォルフ殿下座ろう!」
「ああ、座ろう」
私はトラ丸を抱っこしようとしたが、強烈な猫パンチを喰らった……知ってる、抱っこが嫌いな猫もいるって、モフモフしたかったなぁ。
《ダメ?》
《ダメだ》
《あの、ボクならいいよ》
「ほんとうですか? クロ君!! ヴォルフ殿下いいですか?」
「ハハ、いいよ」
ヴォルフ殿下の許しをもらって、クロを膝の上に乗せて撫でさせてもらった――手に感じるクロの毛並み。
「モフモフ、フワフワ――いい毛並み! 可愛い」
「そう言ってもらえると、嬉しいな」
「フフ、だよね」
ヴォルフ殿下はクロが本当に好きみたい、2人が話せたらいいなぁ。どうにか話す事ができないかな?
《トラ丸、どうにかならないかなぁ?》
《そればかりは、ワシもわからん》
《だよね……私がヴォルフ殿下の手を触りながらとかさぁ、どうかな?》
《やってみる価値はあるかもな》
ふわぁっと大欠伸で隣でくつろぎながら、面倒臭そうにトラ丸は話した。