18
《私がトラ丸、みんなと話せるのは神様のおかげ?》
《そうだ、マリには特別な力がある》
《それじゃ、その特別な力で、お母様を助けられる?》
《なに? ジロウ主を助ける? お前、またわか……マズイ、ワシ達の念話があの男にバレている!》
《ボクにもね》
――私達の念話が2人にバレている?
バッと、クロと彼を見ると楽しそうに微笑んでいた。その顔からは何を考えているのか――ちっとも、わからない。
「それは念話か? 念話を使いトラ丸と話していたのか……うらやましい。でも安心して、人の会話までは盗み聞きしないから」
《うん、ボクもだよ》
さすが魔法大国のヴォルフ殿下と彼の聖獣だ。本で読んだが、クエルノ国は国中に魔力が溢れている。ヴォルフ殿下――彼は王族、高い魔力を持っているに違いない。
今、トラ丸と神様の話をしていたから焦った。まあ、聞かれても変な話じゃないからいいのだけど。転生だとか、神様の話だから――おかしな子だと思われるかも。
「ごめんね。マリーナ嬢、怯えないで」
「お、怯えていません」
「そう? それならいいけど」
――この王子、優しい?
ヴォルフ殿下はこの国の王子、デリオン殿下とは格が違う。彼から漂う王族としての風格? 重圧? 威圧? にトラ丸も勘付いたのか"可愛いお手"で、私にしがみ付いている。自分の身が大事だったら、彼は怒らせてはならない人種だ!
その彼がなぜ、人から離れた嫌われ者の私のテーブルにいるの? 普通は、お茶会の主催のデリオン殿下の所に行くのでは?
「フフ、マリーナ嬢は4年前より淑女らしくなったね」
「私が淑女? 4年前?」
4年前といえばマリーナは5歳だけど――そのときに、何かあったの? 5歳の私はヴォルフ殿下に何かやらかしている? ううっ……ヴォルフ殿下の表情から読み取れない……
(9歳より前のマリーナの記憶って、まだ断片的にしか思い出せていないし――これは、先に謝ったほうがいいのでは!)
「悪かった!」
「ごめんなさい!」
「「え?」」
お互いにキョトンとした顔をした。
(な、な、なんで? ヴォルフ殿下が私に謝るの?)
焦りと動揺で。氷なんてとうの昔に溶けてしまった、アイスティのコップを掴みがぶ飲みして、そしてむせた……
「ゴ、ゴホッ、ゴホッ」
「マリーナ、一気に飲むな」
《マリ、少し落ち着け》
《ブハッ! トラ丸の主人面白い! ギャハハ!》
いきなり椅子を倒して、立ち上がる私。
親切にハンカチ――手を差し出すヴォルフ殿下。
その殿下の足元で笑い転げるクロ。
テーブルの上で、呆れ顔のトラ丸がいる。
静かに私達のテーブルを観察していた周りは。
「マリーナ嬢が、また何かやったのですわ」
「怒った、マリーナ嬢があの子にアイスティをぶっかけた?」
「こんな場所に、問題児を呼ぶからこうなるんだ!」
「教育がなっていない!」
私に対して文句を言いはじめた。