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招待状が届いた一月後。今日、真夏のお茶会か……ダルっ。参加は嫌だけど王族からの招待状だ、病気などでないかぎり断ることは出来ない。
(今回はトラ丸もいるし、ジロウも遠くから見ていてくれるって、言っていたからいいかな)
「マリーナお嬢様、どうでしょか?」
「可愛い、ありがとう!」
水色のリボン、ジンジャー色を髪をポニーテールにして、夏用の爽やかなワンピース風ドレスを着込んた。胸元にお母様が作った魔導具の、涼しいネックレスも着けている。
「コレで、暑さ対策バッチリ!」
前世との夏に比べて魔法、魔導具があるから涼しいが、侮ってはならない。
《会場には、冷たいデザートがあるのだろう?》
《そうだって聞いてはいるけど……かき氷、アイスは無いんじゃないかな?》
《そうか……かき氷はないのか》
《こんど、お母様に氷を頼んで作ろう!》
《ほんとうか? 楽しみだな》
定位置になった頭の上で話すトラ丸。彼は聖獣だから、暑さ寒さは感じないらしい。
――うらやましすぎる!
「マリーナお嬢様、お手を」
「ありがとう」
前回と同じく馬車に乗り込み、1時間から2時間かけて王都へと向かう。本日はお茶会だけど形式は自由――王城の広間と庭園にテーブルが置かれ、招待された貴族達は好きな食事、デザートをとり、好きな所でいただいていいみたい。
(初めから、決められた席じゃないから、よかった)
これなら、嫌われているデリオン殿下に遭わずに済むだろうし、誰も私のテーブルには座らないかも。トラ丸と美味しいものを食べて、終わるまでおしゃべりしてようっと。
《果物がのったケーキが食べたいな》
《私も食べたい》
(撫でると容赦なく強烈な猫パンチ、猫キックが飛ぶ……とくにお尻とお腹辺りは危険ゾーン)
《よっと! ワシ、こっちで寝てるから着いたら起こしてくれ》
《いいよ》
頭から飛び降りたトラ丸は前のベンチシートで、丸くなってお昼寝しだしたがゴロンとへそ天した。
(か、可愛い~眼福、眼福~)
しあわせぇ~!
何事もなく1時間以上かかり王城に着き、私とトラ丸は王城の庭園に移動した。庭園に着いた途端に、貴族達の視線は私を射抜いた。
(あの子もお茶会へお呼ばれしたの? って思っているんだろうな~ハハ……視線がいたい)
《ワシ、そのケーキとそっちのケーキが食べたい》
《はいはい、私はショートケーキにしよっと》
トラ丸が食べたいと言ったものと、目に付いたケーキ、果物をお皿に盛り誰もこなさそうな離れたテーブルに座った。
《飲み物とってくるね》
《ワシ、つめたいやつ》
《はいはい》
アイスティを2つ持って戻ると、誰かが同じテーブルにいる。その子はトラ丸が見えているのか触ろうとして、光ったトラ丸に弾かれていた。
(……え、弾いた?)
「やっぱり持ち主じゃないと、さわれないか……」
誰? あ、あの子……前、デリオン殿下の誕生会にいた、青みがかった白銀の髪の男の子だ。