表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

105/106

99

 学園に入学祝いの舞踏会の2日前――ジャガイモ畑から帰ると、屋敷に舞踏会へのドレスが届いたと、育児休暇中のカカナお母様に伝えられた。


「マリーナ、舞踏会のドレスが届きました。着替えてから私の執務室へ来なさい」


「はい、わかりました」


 部屋に戻り汚れた服を洗濯物カゴにしまい、着替えてお母様の執務室へトラ丸と向かった。コンコンコンと扉を叩き執務室にトラ丸と入ると、子供ベッドに眠るロールとその側で眠るジロウがいた。


「マリーナ、届いたドレスはコレよ」

 

 舞踏会にはデリオン殿下色のドレスだと思っていた。

 しかし、お母様が見せてくれたドレス――それ見て私は驚きを隠せなかった。だってそのドレスの色が……白銀、水色を使ったヴォルフ様の色のドレスだった。


「カカナお母様、私がこのドレスを着てもいいのですか?」


「ええ、着ていいわ。後であなたの部屋へ運ぶわね」


 ヴォルフ様の色を着るのは叶わないと思っていた――嬉しくて涙がでる。その様子を見たお母様は「よかったわね」と目を覚ましたロールと、ジロウを連れて部屋を出ていった。


 ポロポロ涙が止まらない。


「ヴォルフ様の色、嬉しい――ウッ、ウウ」


 私はドレスを撫でながら静かに泣いた。それを静かに見ていた、トラ丸は私の頭から飛び降りると。


《少し散歩に行ってくる》

〈気にしなくていいよ〉


 と言ったが、何処かへと走っていってしまった。



 トラ丸が走って向かったのは、カイとトルが住む別荘だった。トラ丸は走りながら……大事なマリをガチに泣かせた、アイツにどんな理由があっても許せん。


 いまも思い出す、中学1の頃のマリとのかなしい思い出。マリは自分と会うとき、笑顔だが、いつも一人ぼっちだった。


〈コイツは、美味いメシをくれるいい人間〉


 そのマリが自分を見つけ餌をくれながら、ニコニコと話し出した。明日はマリの誕生日だと――いつもいない両親が誕生日にプレゼントを持って来てくれると、また仲の良い両親が見れるかもとウキウキしていた。


 自分が頭を擦り寄せると。


「ええ、トラ丸も祝ってくれるの! ありがとう、大好き」


 と自分を抱っこするマリ。自分もこんなに喜ぶマリに見て嬉しくなった。次の日――マリの誕生日は雨が降った。自分はどこかの屋根の下で、雨宿りをしていた。

 

(いまの時間、マリは家族と一緒か)


 そう思ったが――違った。次の日、マリは普通にしていたが、すると思った昨日の誕生日の話はしなかった。どこか、あきらめた感じもした。

 

(マリに、昨日の話はしないほうがいいな)


 自分はエサを貰おうと、マリの側に座った。

 マリはいつものように笑っていると思ったが――ポロポロと声を出さずに泣いていた。


「トラ丸はずっと私の側にいてね……トラ丸が私の家族、お兄ちゃんになって……」


「ニャ――(なる)ニャ――(なってやる!)」


「なってくれるの? 嬉しい」


 この日ワシはマリの兄になったんだ、マリを泣かすやつは誰でも許さん。ワシは走り、目的地に着くと「出てこい」と声を上げた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ