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ダンス練習の後からルノン街、冒険者ギルドでカイに出会うと、挨拶をしたり冒険の終わりに食事をする仲になった。トラ丸は彼らの聖獣の2人と楽しそうだ。
(お父様とお母様にカイのことを話しても何も言わないし、なによりトラ丸が楽しそうだからいいっか)
たまに学園の舞踏会の話をするために、デリオン殿下に王都へ呼ばれたり。楽しく冒険者、ゲドウさんとラゴーネさんと魔法の勉強をして過ごし。
春を迎え、私は王都にあるシュリル学園に入学する。
だけど、前世に遊んでいた乙女ゲームとは違い、デリオン殿下の婚約者候補から、婚約者にはなっていない。
(まぁ、デリオン殿下が学園でヒロインと出会ったら、婚約者候補からもはずれるはず)
そうなれば婚約破棄も牢屋行きも、国外追放さえもなくなる。早くこいこいヒロインちゃん~と、私は学園の入学に浮かれ、クラス分けの掲示板の前にトラ丸といる。
このシュリル学園は貴族しか通わない学園だけど、学問と魔法テストがあり、その順位によってSからFまでの7クラスに振り分けられる――ひとクラスの人数は10人程度だ。
〈ねえ、トラ丸、テスト勉強を頑張ったから、上位内に入りたいわね〉
《大丈夫だ、マリは頭だけはよかった》
〈それは前世の話だよ、異世界のテストは魔法もあって、けっこう難しいわ〉
「そうだな」っと、トラ丸とテストの順位表とクラスを確認する。私はSクラスで、テストの順位は5位だった。
(5位か~ここはゲームと同じ順位だ。どれどれ1位と2位は?)
確認すると1位と2位はカイとトル。デリオン殿下は7位で、私よりも上にいるはずのヒロイン――リリア・マロンの名前がなかった。――え? 乙女ゲームだと彼女もSクラスなんだけど、上位に彼女の名前が見当たらない。
――だとしたら、魔力が高いヒロインは特別枠かも。
(あとは、同じ学園に通うヴォルフ殿下は……1年の終わり頃に転入してくるのよね。……そして、ヒロインと恋に落ちる)
彼を思い出して、少し寂しくなった。
《……マリ、クラスも確認したし帰るぞ。明日は舞踏会があるのだろう?》
〈うん、帰ろう〉
このシュリル学園は、このロベルト国の中央にある学園。学生は辺境地など、王都よりも遠い土地に住む者もいるため、引っ越しに時間もかかる。
明日の舞踏会のあと、学園が始まるのは1週間後。
私はお父様とお母様に許可を貰ったので、トラ丸と魔力共有しながら一緒に登校だ。――トラ丸は馬車よりも速いし、魔力の訓練にもなる。シュリル学園は制服もあるので、制服をアイテムバッグに入れて登校する予定。