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まったり魔導馬車は空を飛び、ちょうど食事が終わったとき。窓から見える景色が見慣れたものに変わり、私は御者に降りることを呼び鈴で伝えた。御者からわかりましたと返事が来て、反対側に座るカイ様に伝える。
「私はここで馬車を降りますわ。馬車を降りましたら御者に伝えますので、カイ様はこのままご自身の屋敷の前まで、送ってもらってください」
カイにそう告げて、私とトラ丸はヴォルフ様が昔住んでいた、屋敷の前で降り魔導馬車を見送る。この屋敷はお父様に借りていて、一人で着れる衣装など冒険に必要な物を置いている。
(明日は家庭教師もないから、冒険に行こうかな?)
明日の冒険を考えながら、魔導具の鍵を魔法で開けた。一応これも魔法操作の訓練だ。
〈トラ丸待っていて、中で洗濯物を取ってくるわ〉
《わかった、帰りは乗っていくのか?》
〈疲れていなかったら、お願いしたいけど〉
《いいぞ。ポテチとフライドポテトが食べたいから、すぐに戻るぞ》
〈わかった、お願いするね〉
トラ丸が家まで乗せてくれそうなので、私は置きっぱなしのマジックバッグを拾い、その中に洗濯物を詰めた。
「これでよし」
〈トラ丸、終わったから、家に戻りましょう〉
《おう!》
大きくなったトラ丸に横乗りに乗り、家へと守る。その戻るとちゃうで、カイとトルが乗る馬車が動かず止まっていた。
私が屋敷からトラ丸に乗って外に出ると、馬車の中からカイが出てくる。どうやら、何か私に伝えたいことがあったみたいで、彼は敷地内に入らず待っていたようだ。
「マリ、明日はルノンの街に来るのか?」
「え? ええ、明日は冒険に行こうと思っているわ」
「そっか、明日な」
それだけ言うと、カイは馬車に乗り込み帰っていく。ランク、レベルの違うカイとは一緒に冒険に行けない、私はギルド裏の採取畑で、薬草を探す採取クエストだ。
「変なカイ」
トラ丸と家へと戻り、厨房で働くカルロにポテチとフライドポテトをお願いしていると、弟のロールがパレットに抱っこされてやってくる。
「マリーナお嬢様。ロール坊ちゃんがお嬢様の帰りを待っておりました」
「ねね、ニャーいた!」
私達がいないと探していたのか、真っ赤な瞳のロールに「ただいま」の挨拶をする。
「ただいま、ロール」
《戻ったぞ》
ロールは嬉しそうに、私たちに小さな手を伸ばした。




