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王都の馬車置き場に置き、カイとトル2人の聖獣、私とトラ丸で王都へと繰り出す。王都に来るのは数年前、ヴォルフ様と一緒に来た以来だった。
(たまに王城へ呼ばれたときも、用事が終わったらすぐ屋敷へ、帰っていたから久しぶりだわ)
カイは王都へ来た事があるのか迷わず、繁華街へと連れて行ってくれた。
「いい匂いだな、マリ嬢はなにが食べたい?」
「私はサンドイッチと苺のクレープかな? ……あとは」
頭の上でトラ丸が「唐揚げ、唐揚げ」と騒ぐ。
私も唐揚げは気になるけど……からあげ店の前で買うか、どうするか迷っていた。
カイはそんな私を見て、口元だけでフッと笑い。
「俺は唐揚げかな? チーズかけもいいが、普通のも食べたいな」
「わ、私も家族へのお土産に買おう」
(ほんとうはトラ丸が食べたいって言っているからだけど、多めに買って帰ろう)
小さくすれば弟のロールも食べれるし、と買おうとしたが、カイは唐揚げを私の分まで買っていた。それだけでは終わらず、サンドイッチと苺のクレープの料金まで払ってくれたいた。
「あの、お金を払います」
「いいよ、俺も食べたいから」
カイは大量の食べ物を馬車に置き、私に手を出す。「ありがとう」と、手を借りて魔導馬車に乗った。魔導馬車は魔石の力を使い浮き上がり、空をかけていく。
反対側に座ったカイは買った食べ物を、隣に座ったトルと広げはじめた。馬車の中に揚げたての唐揚げの香りがして、ゴクッと喉を鳴らした。
「マリと、その膝の子はどれを食べる?」
と、いきなりの呼び捨てと、頭の上から降りて膝でくつろぐ、トラ丸を指差しした。――やはり聖獣を持つ、カイにはトラ丸の姿が見えているようだ。
(彼にも聖獣がいるのだし、別に見えていても気にすることはないわね)
「私はタマゴのサンドイッチを食べます」
《ワシはノーマル唐揚げ!》
遠慮なく食べたいものを告げる。「わかった、サンドイッチと唐揚げだな」カイはどこから出したのか、皿にタマゴのサンドイッチと唐揚げを乗せてくれた。
「どうぞ、マリと――」
「この子はトラ丸と言うの」
「へぇトラ丸か~。じゃ、マリは俺とトルの聖獣も見えてるんだろ?」
そうだと、コクッと頷く。
「だったら話が早い。俺の横にいる黒犬がケンで、トルの肩に止まるのが、鷹のターって言うんだ」
《よろしく~》
《ターだよ》
「ケン君、ター君よろしく。私はマリーナで、この子はトラ丸だよ」
《トラ丸だ、よろしく》
トラ丸に新しいお友達ができた。