表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/106

94

 カイの話ではデリオン殿下は用事で、友達のカイがダンス練習の相手に選ばれた。初めての人と踊るのは緊張するけど、私はドレスを持って頭を下げた。


 トラ丸は邪魔になるからと、私の頭の上から降りて、日の当たる場所に移動した。


〈ねぇ、トラ丸。ダンス練習が終わって屋敷に帰ったら、カルロにポテチ作ってもらおう〉


《ワシはポテチと、フライドポテトも食べたい》

〈フライドポテト! いいわね、頼みましょう〉

 


 礼の後、私よりも身長の高いカイを見つめた。


「よろしくお願いします、カイ様」

「よろしく、マリ嬢」


 彼が背中に手を回し、ホールドをしてカイとダンスを踊る。初めて踊る彼とのダンスは、自分勝手なデリオン殿下とは違い踊りやすく、ギルドで感じた彼の大きな手のひらには硬い剣ダコがあった。


(カイさん? 様、はギルドで強いと聞いていたけど、努力して強くなったんだ)


「マリ嬢はダンスが上手いね」

「ありがとうございます、カイ様」


 なれない、くすぐったい呼び方と。それ以上はお互いの趣味、好きなものを知らず会話は続かないが。ダンスの途中――身長の高いカイを見上げると、優しく私を見つめる彼の瞳とかち合う。


 ――うわっ。デリオン殿下と踊るときはなにも感じなかったけど、彼の優しい瞳にドキドキしてしまった。


「いつもの冒険着とは違う、そのドレス姿は可愛いね。でも胸が開き過ぎじゃないかい」


「え、胸ですか?」


 カイの瞳が私の胸を見ていた。そう私の胸は乙女ゲームの様に形が良く、大きく育った。しかし初めてのダンスでそれを言うとは、いくら紳士のようなカイでも胸が気になるようだ。


「舞踏会当日の衣装ですわ、他の令嬢も同じようなドレスを身のつけますわ」


「そうか……すまなかった」


 視線を外し、眉をひそめた彼に私は微笑み。


「いいえ、気になさらないでください」


 と告げる。


 


 私たちの他に誰もいない、ダンスホールでのダンスの練習。休みを挟みながらカイと何度踊っただろう――彼はやはりダンスが上手く、踊っていて楽しかった。


 時刻となり今日のダンスの練習は終わる。


「マリ嬢、練習お疲れさま。悪いのだけど、帰りの馬車に俺とトルを乗せてくれないかい」


「え? ――ええ、ルノンの街までお戻りに乗るのですか?」

 

「ああ、その近くに俺の別荘があるからね」


 となると、ルノンの街の近くに建てられた、あの大きな別荘。なんでもお父様の古くからの知り合いの、息子さんが住むと言っていた。


「では、行きましょう」


〈トラ丸終わったよ、帰ろう〉

《おう! ポテチ、フライドポテト》


 練習が終わり、いつものように頭に乗るトラ丸。そのトラ丸が見えているのか、カイの瞳が追った。やはりカイにも聖獣がいるからか、聖獣のトラ丸が見えているみたい。


(だけど、なにも言わないから。彼の聖獣について聞けないなぁ)


 カイとトルの後についていく、彼らの聖獣の黒猫と鷹を見つめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ