7 マカロン
「まあ せっかく来たんだから お茶でも飲んで行きなさい」
作務衣のお坊さん?だよね 髪型、坊主じゃなくて普通だけど?が玄関の方へ向かう。どうしようかとアカリさんを見る。
「客殿でいいかなぁ?」
もう、お茶をいただくのは決定みたいにアカリさんが微笑み、お坊さんが振り向いて笑いながら言う
「頂きもののマカロンあるぞ?こうづき嬢は嫌いか?」
「好きです!」
お坊さんがガラガラと玄関の引き戸を開ける
「おーい 明星にお客さん。お茶用意したって」
お坊さんは言いながら 玄関からまっすぐに奥へいってしまった。
「俺らは こっち」
アカリさんは靴を脱いで左手の廊下を指差す。アカリさんにくっついていた少年は……靴を脱いだ
「これ、見えますか?」
ワタシは少年の脱いだ靴をつまんで示そうとした。けれど、ワタシの指はその靴を通り抜けた。
あああ!”変な”行動を取ってしまった!
「見えないねえ 何があるの?」
アカリさんが残念そうな顔をした。
それが気持ち悪いモノを見る顔でも、目でも無かったことに目の奥が熱くなった。ワタシ泣くの?なんで?
「ごめん!見えなくて、ホントにごめんなさい!!」
アカリさんは本当に謝ってばかりいる気がする。
ワタシ今、なんで泣いてるのは、アカリさんが視えないからじゃないですよ。
そうだ ワタシが泣いているのは、
視えてるモノの話をしても、引かれたり、気持ち悪がられたりしなくて、安心したからなんだ。
少年が心配そうにワタシを見上げている
「こっちこそ ごめんなさい、です。 大丈夫です」
スカートのポケットからハンカチを引っ張り出して涙を拭いた。
アカリさんがホッとしたように息を吐いて障子を開ける
「小さい寺だからさ、客殿っていっても、単なる座敷なんだなんだけどさ」
障子を開けて入ったのは広い和室。昔の家みたいだね。
「広いですね?」
「本間だからね 廊下も広かったでしょ? 古い家だから冬はさっむいよ~」
アカリさんが 言いながら押し入れから座布団をだしてくれて、ワタシはその広い部屋の片隅にちんまりと座る
「お茶もらってくるから 待ってて」
アカリさんが出ていくのについて行こうとした少年が 迷ってからワタシの正面に座った。
「アカリさんのお願い聞いてくれてありがとうございます」
「なんで 君が?お礼を言うの?」
「ぼくはアカリさんに何もできないから……」
「そうだ! 君、名前は?」
「僕 自分のこと、名前も分んないんです」
「名前 忘れちゃったの?」
「よくわかんないんです。人波に流されて、気がついたら、よく知らないところにいて、通る人に声かけてみたんですけど、聞いてくれなくて。
困っていたら、アカリさんキラキラに気がついて、明るくていいなあって手を伸ばしたら、アカリさんの首に下がっている紐に触ることが出来て、それで、嬉しくなって アカリさんについて歩いているんです……」
「おまたせ!」
お寺っぽい茶托に乗った湯飲み茶碗。白地に桜の花びら?それからマカロン!!