2 不思議な光景
中学では視えないふりをして過ごしている。その甲斐あってか、中2になった今でも概ね平和な日々を過ごしている。
けれど、
でも、
だけど、
ねえ?
今 ワタシはスマホをいじっているフリをしながら、向かいに座っている学ラン姿のオニイサンから目が離せない。
ちょっと想像してみてよ。
学校帰りの電車に乗ったあなたの前には、学ランのちょっとキレイめな、なんだかキラキラしているオニイサンが居ます。そして その膝に乗ってみたり、肩に手をかけたり、首元からネックレス?じゃなくて、紐?を引っ張り出したり、頭に乗ろうとしているのは小学校の4-5年生くらいの男の子です。
オニイサンは引っ張り出された紐をすぐに学生服の中にしまうけれど、不思議な事に
頭にまで手をかけられているのに髪の毛は乱れていないし、頭に乗られているのにオニイサンはまったく重くないみたいで、気にしていない。
ってことは
つまり
ねえ?
こんなにはっきり視えているのに、少年はこの世のモノじゃないんだろうな、つまり”お化け”だ。
でも まあ オニイサンはキラキラさんにも好かれているようだから大丈夫だよね?
「バイバイ」
電車を降りる時に口の中でだけ言った。
なのに、
「ねえ、ボクに何がついてるの?」
なぜか、オニイサンがワタシの後からに降りて来ていた。
しかも”何がついてる?”と聞いてきた。”なにか”じゃなくて、”なにが”だ――
逃げよう!!
そう思うけれど、ろくに人付き合いをしていないワタシは何と言って逃げたらいいのか分からない。
「痴漢です!」
とでも言おうか?嫌、ソレは流石に無いなぁ、オニイサン犯罪者になっちゃう。
「驚かせてごめんね。お詫びにジュース奢らせて?炭酸大丈夫?」
「あ、はい、大丈夫です」
気が付いたら、なぜか、緑に白い水玉の絵のラベルの付いたペットボトルを握って、駅のベンチに座っていた。
もちろん隣には 健康茶のペットボトルを持ったオニイサン。と、その膝には少年。
この少年、なかなか可愛い顔立ちで、学校案内のホームページの制服コーナーでモデルにでもなっていそうだ
「今 俺に憑いているナニカは膝の上に居るのかな?」
オニイサンはペットボトルの蓋を開けながらワタシの方に顔を向ける
「え 分かっていたんですか?」
あ!返事してしまった、 あわてて口を押えるけど手遅れだよね
「もしかして美少女だったりする?それかなんか小動物もいいなあ」
憑かれているって自分で言う割には 嬉しそうに言うオニイサン。